Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜
「何だか、面接されてるみたいですね!私は日本から来ました。アメリカでは叔父の家で暮らしています。見学は一人で来ました」

「本当の家族は日本にいるのかい?」

「はい。父は会社員をしています。それから六歳下の弟がいます。母は、弟を産んだ時に亡くなりました」

「えっ……」

一花が少し悲しそうな顔を見せたため、アルフレッドは慌てて「ごめんね」と謝る。医学部に入学できる頭脳を持っていたとしても、目の前にいる彼女はまだ子どもなのだ。

「気にしないでください。私は、母と親友を失ったことで医者になろうと決めたんですから。二人の存在は決して暗い過去じゃない。私の希望なんです」

そう話す一花の目に決して迷いなどはなかった。その目を見た刹那、アルフレッドの心が動いていく。目の前にいる歳下の彼女が強く、かっこいい存在に見えてしまった。

「……君は、誰よりも強くて優しいんだね」

ポツリとアルフレッドが呟くと、一花はかばんの中からスマホを取り出し、時間を確認していた。そして、「やだ、もうこんな時間!」と日本語で呟いている。
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