Cherry Blossoms〜難解なカルテ〜

「ッ！？」

それは、まるで狩りをする前のお腹を空かせた猛獣のような鋭い視線だった。ゾクリと寒気が桜士の体を走り、彼の手は迷うことなく隠し持っていた拳銃に触れる。そして、拳銃を視線を感じた方へと向けた。

「え〜、いきなり銃向けんの？随分物騒な歓迎だね〜」

銃を向けられた相手はゆっくりと両手を挙げ、「降参です」と言わんばかりの態度を見せている。黒いスーツにループタイ、ミルクティーブラウンのふわふわとした髪に、赤い瞳の華やかな顔立ちの男性がそこにはいた。

「お前は誰だ？ここの従業員ではなさそうだな。……あの不審人物の仲間か？」

桜士がギロリと睨み付けながら男性に訊ねる。男性は銃を向けられているというのに、その顔には楽しそうな笑みを浮かべていた。

「うん、ここの従業員じゃないよ。お兄さんの推理通り！お兄さんすごいね！シャーロック・ホームズみたいだよ〜」

ケラケラとふざけたように笑う男性に、桜士は苛立ちを覚えつつ、「お前は誰なんだ？」と訊ねる。男性は笑うのをやめ、冷たい目で桜士を見つめた。