ベタに、切って
「カナコ、カナコってば」
「へ?」
「もうついたよ。ここだって」
「あ、ああごめん」
「ぼーとして、大丈夫?」
「うん、平気なんだけど…ちょっと」
もう目の前にいたカップルはいなくなっていた。どうやら清水寺のほうに向かったらしい。
いつのまにか信号も渡っていて、見上げれば鳥居があり、鳥居の真ん中に安井金比羅宮と掘られている。鳥居の下にはホームページでみた、悪縁を切り良縁を結ぶ祈願所という文字がぶら下がっている。鳥居の奥をまっすぐ見つめると、それなりに観光客がどんどん鳥居を潜って小さくなるなか私は鳥居の中からこちらを見ているような視線を感じた。
小さく息を飲んだ。じっとりとした視線はどこか憐みを含んでいるような生暖かさえも感じる。カナコにとって初めての経験だったのは、この鳥居を潜ってそれこそ悪縁を切ってくださいとお願いしたらきっと叶えてくれるだろうというのが肌で感じられたことだった。
空気がどんよりと重さを持っているようで、呼吸もしにくい。
「へ?」
「もうついたよ。ここだって」
「あ、ああごめん」
「ぼーとして、大丈夫?」
「うん、平気なんだけど…ちょっと」
もう目の前にいたカップルはいなくなっていた。どうやら清水寺のほうに向かったらしい。
いつのまにか信号も渡っていて、見上げれば鳥居があり、鳥居の真ん中に安井金比羅宮と掘られている。鳥居の下にはホームページでみた、悪縁を切り良縁を結ぶ祈願所という文字がぶら下がっている。鳥居の奥をまっすぐ見つめると、それなりに観光客がどんどん鳥居を潜って小さくなるなか私は鳥居の中からこちらを見ているような視線を感じた。
小さく息を飲んだ。じっとりとした視線はどこか憐みを含んでいるような生暖かさえも感じる。カナコにとって初めての経験だったのは、この鳥居を潜ってそれこそ悪縁を切ってくださいとお願いしたらきっと叶えてくれるだろうというのが肌で感じられたことだった。
空気がどんよりと重さを持っているようで、呼吸もしにくい。