ベタに、切って
「まだ、なんにも捨てれない、納得もできていないし、どうしようもできない。ここにきて、ここでお祈りしたら本当に彼との縁が切れてしまう。それがどうしようもなく、怖い」

アラサーの私には彼にかけた時間も、愛も非常に重たいものだった。若い時の身軽さはなく、すぐに吹っ切ることはできない。笑い話にはできる、けれど、一人になったときいくつもの愛おしさと憎たらしさ、惨さがないまぜになって吹き出てくる。でもそれすらも愛おしかったから悲しい。簡単に縁を切るなんて、私にとってできるはずがない。まだ縋りたかった。

「ごめん、カナコ、本当に、ごめん」

「折角、連れてきてくれたのに、キミエごめんなさい」

「違う、私が悪い…ごめんねカナコ」

「いや、連れてきてくれたからわかったの。だからありがとう」

二人でホテルに帰って、ツインのお部屋のベッドに転がりながらあの時話せなかったことを整理しながらキミエに話した。キミエはずっと「殺してやりたい、呪殺」とか色々親身になって聞いてくれた。京都のお土産売り場で買った伏見の日本酒を持ち込んで、言葉にしていなかったケンスケへの恨みごとをつまみにどんどん呑んだ。朝方までのんで二人してホテルからの電話で目覚めた。朝方に寝たにも関わらず、身体はここ最近で一番調子が良かった。
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