ベタに、切って
ちょきちょきちょきちょき。

「まじでいい友達じゃないすか」

ちょきちょきちょきちょき。

「本当に。改めて友達は一生ものだと痛感したんです」

「で、とうとうなんですね。いやーこんな綺麗な長い髪をばっさり切らせてもらうのって本当に光栄というか美容師冥利につきるというか」

あれから時は経って、もう年の瀬である。今年はとても寒く、12月上旬から雪がちらついていた。いつも通っていた美容院では長さをそろえる程度だったため、こないだ来た時に断髪式を行うことを宣言していた。担当のこの方はばっさりイメチェンをずっとこれ以上ないくらい進めてきたが、いつも彼氏がこのほうが喜ぶからと断っていた。けれど、今回宣言してきたことによって気合をいれてきたらしい。「絶対もっと美人にさせますから」と真剣に言われた。

「本当?大変じゃないですか?」

「大変じゃないですよ、ずっとショートにしたらいいのにって思ってたんで、俺。今回毛先にブリーチして金いれるじゃないですか。新しい自分って感じになれると思うんですよ。ほら下見てください、すっごい髪の毛の量ですよ。軽くてびっくりすると思います」

自分のまっすぐな髪の毛が束になって散らばっている。目に見える厄落としだな、と思った。出来上がっていく様を眺めているが、本当にイメージが変わる。京都にいって、腹を割ってキミエと話して驚くほど吹っ切れた。徐々に部屋は片付いて、ケンスケの荷物も捨てることができた。何回か電話がかかってきていたが、自分から着信拒否にした。人づてにきいたがうまくいっていないらしい。もうリボンとパールのヘアアクセサリーは必要ない。

「たしかに途中で切ってる時点でとても軽いよ、冒険するのもいいもんだね」

「人生は冒険ですよ、本当に。この後どこかおでかけとか行くんですか?」

「はい、さっきの話に出てきた友人とアフタヌーンティーしに行こうと思って」

「あ、じゃあきっと喜ぶはずですね。今日の姿、見せたら」


キミエは絶対に喜んでくれるだろう。そう、確信している。
思わず笑みが零れ、何故か美容師の彼は鏡を見つめたまま固まっていた。


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