ベタに、切って


振られたその日よりも、その写真を見た瞬間私の中でケンイチは死んだのだった。

キミエは眉毛を釣り下げて、それは悲しそうに唇をキュッと折りたたんだ。
その様子を見て、心底、羨ましいと思った。

いいなあ、キミエは。
自分の感情に素直でわかりやすい。だからこそ感情の切り替えも多少引きづることはあっても、自分自身で感情と向き合い決着を付けることができる。

私はどうだろうか、自分で生活を立て直すことができなくて、今どれだけ考えても喪失感以外の感情を考えることはできない。おまけに生活すらも乱れてしまって、立て直すにも時間がかかっている。昔からだ、テストで一問躓けば、その後からリカバリーできなくて赤点で泣いたことがある。

「カナコ、この旅行楽しもうね」

「勿論」

ぎこちなく笑ったキミエに同じような笑顔で返した。
< 5 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop