ベタに、切って


旅行の日は二泊三日に決まった。九月といえど残暑が続く日で、新幹線で京都駅についたときいやにはりつく暑さだった。汗も吹き出るように、しっとりTシャツを湿らせていたが、そのまま京都市営烏丸線に乗り込み、二駅後の四条駅で降りた。

思ったよりも歩くと時間はかかりそうだったが、もうお昼ごろのランチタイムになっていたためゆっくり向かうことに決めた。まず八坂神社までひたすら一本道ではあるが、道幅が広いといっても人が多い。

観光客、修学旅行生は一目で目についた。掻きわけるように歩き、私は京都の蒸し暑さを痛感しながら、縁を切りに行くことに漠然とした不安を感じていた。カナコがやってきたあの日から二か月ほど経った。

驚くほど断捨離は進んでいなかった。ひとつひとつを掴んでゴミ袋にいれようとするたび躊躇してしまう。まさか歯ブラシのひとつも捨てられないとは思わなかった。キミエならきっとその歯ブラシを排水溝の掃除にでも使って捨てているはずである。自分の部屋に泊まりに来て横に並んで歯を磨いてそのまま彼の広い背中にしがみつくように眠ったことを覚えている。もらった黒いリボンとパールがついたヘアアクセも私の重たくてやぼったい黒髪をまとめるのに丁度いいとプレゼントしたものはまだ断捨離リストにも入っていない。
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