ベタに、切って
「キミエって歴代の元カレはどういう風に忘れたの」
キミエはこちらを見ることなく、軽い調子で
「まず写真を焼いて供養してた」
「なかなか…」
過激である。
「そのあともらったものはフリマアプリやリサイクルショップに持って行って換金してた。でも」
「でも?」
「どんなことをしても空しいことには変わりないし、人間全部が全部クソなわけでないからさ。燃やしたのは完全に忘れるための形式的な儀式みたいなもんで、そんなすぐに切り替えとかできなかったよ」
キミエの横顔をじっと見つめた。凛とした真っ黒な瞳はどこか憂いているようにも見えた。彼女は真っ直ぐ向いていて、振り返らない。けれども俯くこともあるのだと思い知らされたのだった。キミエの本質を今更知ることができて、少し恥じた。
「そうだよね」
「そうだよ。友達はさ、縁が切れるって本当に自然で宣言も基本しないけれど、恋人は基本金輪際同じような気持ちで会うことなくて、もうお別れだからさ」
「今までの彼氏とより戻したこととかあったっけ?」
「あーないな。恋人から友達にはなりえないから、よりを戻す前に関係が断ち切った状態だから戻らないんよね。戻す必要を感じなくて、別れたのは本質的に無理な部分があってどうしようもなくて別れるから。人間そう変われないよ。カナコはあったよね?」
たしかに昔の彼氏と一度だけよりを戻したことがある。別れてから二年くらい経ってからだ。お互い時間がかち合わなくて嫌いになることすらできず、別れたのだった。よりを戻したときは別れた理由さえも覚えていなかった。だから、向こうからドタキャンをされたことによって別れた理由を思い出したのだった。
「もうぼんやりとしか覚えてないけど、あったよ」
今ではどこが好きだったのか思い出すこともできない。