約束された血の匂い

その15

約束された血の匂い/その15
麻衣



サングラス姿の倉橋さんは、アツシを無視してタバコを吹かしてる

私は哀れなカメの脇で、勝田さんからチェーンソーの使い方、手ほどきをね…

なにしろ、初めてだから

”ウイーン…、ブブ、ウイーン…!”

おお、エンジンかかったわ

「わー、重たいなあ。これ…」

「麻衣さん、じゃあ、この椅子の足で試し切りしましょう。俺が一緒に持って支えますから」

そう言って、私は勝田さんに後ろから抱えられるように、チェーンソーを両手に持って立ちあがった


...



「おい!マトをしっかり押さえつけとけ。まずはこの椅子でキレ味を計る」

「ハイ!」

若い男二人がアツシの体を、左右からがっちり押さえこんだ

「わー!やめてくれー!殺されるー!」

もうあらん限り絶叫して、声がかれかけてるわ、コイツ

「おい、気が散るから口ふさいどけや!…、いいですか、麻衣さん。俺の誘導に合わせて、ここを切断しますよ。まあ、コイツの足との隙間はわずかだし、多少切っちまってもかまいませんよ」

アツシは半狂乱で抵抗してて、こっちまでその”熱気”が伝わってくるよ

「ええ、じゃあ…。こうかしら」

”ウイーン…、ブブ、ウイーン…”

”グイーン、グイーン、ガリガリ…、ブブブッ…”

「ぎゃー!」

「あっ…、ちょっとやっちゃったかな…」

「ああ、そのくらい、最初はしょうがないですよ」


...




”スコーン!”

長さ約20センチの脚は床に落ちた

そしてすぐに、その角材にぽたりぽたりと、赤い血が数滴滴った

「いやあ、いい手さばきだ。刃の切れ味も問題ないようだし。じゃあ、今度は一人でやってみましょう」

「やめろー!やめさせてくれー!親分、何でもします、だから助けてください。この人を止めてください!」

ここで”撲殺人”が口を開くことになってる…





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