約束された血の匂い

その16

約束された血の匂い/その16
麻衣



「…いいか、西城…。麻衣にチェーンソーで細切れにされたくなかったら、こいつに本郷麻衣個人からの処置ではなく、お前の仕出かした過ちをはっきり認めて、相和会幹部の処分に委ねる上申をしろ」

こういう場面での撲殺男こと倉橋優輔は、まさに鬼気迫ってる

静かな口調がかえって、張り詰めた空気を引き立たせてね

「もうすぐ嫁になるこの麻衣に、できれば人殺しはさせたくねえ。だが、麻衣だけは俺にだって、簡単には制止できないんだ。お前が頼むしかない。おい、起こしてやれ」

ようやく、カメの状態から元に戻されたアツシは、必死で呼吸を整えてる

「はあ、はあ…」

コイツ、もう脱水状態で、乾いた唇をワナワナ震わせてるよ


...



これから正面に立っている私に向かって懇願するらしい

「麻衣さん、あなたの言ったことは全部認めます。俺へのケジメは相和会のモンとして、しっかり仕打ちを受けますので、その手に持ったもの、止めてください。お願いします」

「しょうがないわね。せっかくコレ、振り回せると思ってたのに…。ダーリンがああ言ってるし、あんたが全部認めるんなら、バトンタッチして見物にまわるわ。ああ、勝田さんどうやって止めるんだっけ?」

これで、私の”仕事”は終りだ

結局、ヤツは相和会の人間として、組を売った行為を認めたことになる

私はこの世界のルールってのに精通はしていないが、かなり重大な処罰の対象にはなるだろうさ

西城アツシは、私に殺されるという恐怖から逃れたいあまり、咄嗟にその場しのぎをしたにすぎない

で、この後、”本来”の裁きを受けることになる

では、プロの世界のお仕置きを見届けさせてもらおう

ダーリンの撲殺人ぶりを…





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