約束された血の匂い

その18

約束された血の匂い/その18
麻衣



ヒールズでの剣崎さんとのミーティングが終わって、2階から倉橋さんが降りてきた

カウンターでビールをぐいぐい飲みながら、撲殺男が隣で週刊誌を読んでいる私に、例のとつとつ調で話しかけてきたわ

「麻衣ちゃん、聞いていいかい?」

「なんですか?」

「アツシは中央公園では、”抜擢”だと思い込んで図に乗ってる。”彼女”にはますます大ボラだし、久美って子も真に受けて熱が上がってるみたいだ。麻衣ちゃんはなぜ、あの久美って子とアツシを強引にでも別れさせないんだい?」

「確かに久美はここんとこ、バッジの彼がついたことを臭わせて、チーム内でも一部からは反感を買ってます。どんどんあのクソ男に染まって、久美にとっては極めて悪影響だって、私もそう実感してますしね。別れさせなきゃ、久美がダメになるって」

「なら、なんでだい?もともと、中央公園後の二人を見て、引き離すつもりだったんだろう?」

「ええ…。そうするつもりではあります、今も。でも、正直、迷ってるんですよ。私が強引に別れさせても、あの単純な久美のことだから、また繰り返すんじゃないかって…。やっぱり自分で決断させるように持って行かないと、意味ないかなって」

「…」


...



「真樹子さんがそうでしたから。あくまで、自分の意思で断ち切った。だから、彼女はそのあと、輝いてる…。倉橋さんはその現場、その目で見てますよね?」

「だけど、久美って子に同じことを期待するのも、どうなのかな…(苦笑)。まあ、俺みたいな人間がどうのってガラじゃないが、あの子はなあ…」

「うん、私もその辺は承知してるんで。近く機会みて、背中を押してみる考えです。できる限り、自分で持って行かせるようにしたいんですよ。それに今、久美は幹部格として頑張ってるんですよ。自覚も少しずつ出てきていますから、私としては、そうしたいんです」

「わかった。麻衣ちゃんに任せる、その件は」

「ありがとう、倉橋さん。でもね…、一方では、西城アツシを追い込む手立てとしては、久美ともう少しくっついててもらった方が、こっちには都合がいいとも思ってるんです。ふふ…、結構いいネタ晒してくれるかもですよ、あのクソ男は」

倉橋さんは「なるほどな…」って、感心してたわ





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