約束された血の匂い

その20

約束された血の匂い/その20
麻衣




「ものの見事にハマってるでしょ、ヤツ…」

「はは、まさにだ。それにしても”あの女”、役者だなあ…。いちころだったみたいだ、そのエリカとかってホステスに、西城はさ」

その日は、いつものリッチネル最上階がとれなくて、2階の室だったわ

ちょうど、着いたところ…

で、ベッドに二人して腰かけて、この人は煙草をくわえ一服してる

「フン、麻衣が”力”を行使できるのは、会長からクスリの条件を呑んだと、はっきりだったそうだ。ヤロウ、カンは鋭いところがあるからな」

「それと、身の施し方は砂垣順二以上かもしれないわ。クソよ!私、殺すわ。然るべき場で、しっかり懺悔させて、それからやってやる!」

「麻衣…、ひとつ聞かせてくれ」

「何?」

「西城は断罪する。当然な。だけどよう、あんな野郎、別に珍しくないぞ、今の世の中。なのに、なぜそんなにムキになるんだ?俺から言わせれば、お前なんかが相手にする輩じゃないと思うんだ…」

この時の彼の言葉には、あえて答えなかった

私はその場でいきなり服を脱いで、彼に抱き付いたわ


...



「麻衣…、大丈夫か?」

「うん、平気…。終わったのね…」

「ああ…。ヤツを病院に運んで、あとは他の人間がここを済ますから、俺たちは引き上げよう」

「私も後始末を手伝うわ。あなたは先に戻ってて」

「おい…、なにもお前が血のふき取りまでやることねえよ」

「ふふふ、最後まで体感したいのよ。あ、勝田さん、そのモップいいかしら」

私は、倉橋さんの隣にいた勝田さんが持っていたモップを指さした

「え?でも…」

「勝田、麻衣には最後までやらせてやってくれ」

「あっ、はあ…」

私はモップを受け取り、床に飛び散った血やら何やらを掃除している、みんなのところへ駈けて行ったわ

そして振り返って、彼に大きな声で言った

「今夜、部屋に行くわ。じゃあ、後でね…」

小さく頷き、右手を上げてる撲殺人のサングラス奥の目は、気のせいか少し笑っているように見えた





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