約束された血の匂い

その8

約束された血の匂い/その8
真樹子



麻衣さんの予想はズバリだったわね

「久美、それでヤツとはまだ、会ってないのね?」

「はい…、でも本当は会うつもりでいました。私、意志が弱いんです、やっぱし…」

久美…


...



「とにかく、そいつと会う前でよかった。いい?接触した場合でも、絶対に突っぱねるのよ。もし、言い寄ってくるようなら、”私、新しい恋人ができたから”って、毅然とね。わかった?」

「ええ…、だけど、向こうからそれ誰だとかってか突っ込まれたら、顔に出ちゃうと思うんですよ、私。ウソついてるって…」

「じゃあ、具体的に”新しい恋人”決めとこう、ここで。その人とは、近いうちに会わせる。それでその人といろいろ話してさ。奴らから、もし詮索されても、”彼”のことある程度答えられるでしょ。あくまで仮の”彼”だから、割切ればいいわ」

「そうですね。真樹子さんは凄いなあ…。そうやって、どんなことにもちゃんと対処することができて…。それに比べて私なんか…」

この子、南玉じゃあ出戻りってことで、周りの目を気にして小さくなってるんだろうな

自信もなくしてるし、やはり支えになる人間が必要だわ


...



「久美、元気出しなさいよ。私がついてるでしょ。麻衣さんだって、あなたのことは常に気にかけてるわ。細かい周辺の調整は、私たちが抜かりなくやっておくからさ、心配はいらないって」

「麻衣が私のことを…」

当たり前でしょ、麻衣さんがあなたを殴ったのは愛情なのよ

あの人も私も、去年の再編成劇では、あなたを主要人物の一人とみなしてるんだから

「これからかなり動きがでてくる。そこでは、あなたにしかできない役回りがあるはずだから、早く以前の久美に戻んないと…。ねっ!」

「真樹子さーん!」

わあ、久美のヤツ、全開で泣き出しちゃった…(苦笑)

「自分を守るためのウソよ。踏んばるのよ、久美。自分に負けちゃダメ。あなた、自分の出番に備えるのよ!」

「はい、私やります。お願いします…」

下唇をかみしめて、久美は何度も頷いていたわ


...



ふう…、何とか間に合ったかな

早速、麻衣さんに報告だわ

その上で私の組み立てを話して、久美の新しい”彼”に同意してもらわないと…

とは言え、、麻衣さんは渋るだろうな

私の人選聞いたらさ

はは…




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