⒊初めてのデート


家に戻り、疲れたのでお風呂に入ろうと浴槽にお湯を貯めながら荷をほどいた。
お爺様とお婆様に頂いた通帳が入った袋をどこにしまおうか悩んだ。
こんな大金持ったことが無い。通帳と印鑑を別々にして保管場所を考えた。
通帳は鍵のかかる机の引き出しに、印鑑は私のタンスにでも・・・。
こんなところにしまっても腕のいい泥棒には直ぐに見付けられてしまうのだろうなと思いながら狭い部屋をうろうろした。


浴槽にお湯がたまったのでひとまず通帳と印鑑をしまって、ゆっくりとお風呂に入った。
自分の家でのお風呂はくつろいだ。湯舟に浸かっていると直ぐに眠くなってきたのであわててお風呂から出て部屋着に着替え、ベッドに横たわった。
いつの間にかそのまま寝てしまった。


朝、目が覚めるとちゃんと布団にくるまっていた。
ゆっくり起きてブランチを食べた。ブランチといってもシリアルと牛乳だった。
家にはたいして食材が無い。一人だとあまり料理をしない。作るのは嫌いではないけど、買って食べた方が経済的だった。
しかし、久しぶりに自分で作ったカレーが食べたいと思った。
母を見舞いに行った帰りに食材を買ってきて作ろうと決めた。


病院に行った。

「お母さん・・・」

今日は寝ていた。
私が声をかけたので母は目を開けた。

「ごめん、起こしちゃったね。」

「楓・・・お疲れ様。ありがとうね、大変だったでしょ。」

母はそう言って私をねぎらった。今日はあまり体調がよさそうではない。

「お母さん、三崎家の人たちはとても良くしてくれたよ。お爺様もお婆様も許してくれたんだよお父さんのこと。良かったね。」

母は目に涙を浮かべている。

「・・・楓のおかげだね。」

母は言葉に詰まり泣いた。どれだけ今まで気にかけていたのかと改めて思った。

「お母さん、あとね、お爺様とお婆様がお父さん名義の通帳をくれたの。お父さんが生まれてから先月まで毎月事ある毎に入金してくれていたのよ。」

「そうなの・・・お父さんの為に・・・」

「本当はね、結婚するときに渡そうと思っていたんだって。でも渡せなかったってお爺様も泣いていたよ。」

「そう・・・」

母は泣き続けた。

「お母さん、1000万以上あるの。ビックリでしょ。」

「・・・やっぱり息子のことは可愛いのね。」

「そうだよ、親子だよ。」

「楓、いろいろありがとうね。本当に楓が私の娘で良かった。」

母がこんなことを言ったので驚いた。

「なんだかくすぐったいな。お母さん、早く元気になってお父さんのお墓参りに一緒に行こう。」

「そうね、頑張らないとね。」
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