脱獄
後ろを振り返れば彼がついてきている。

このまま、さよならでも良かったのに。


「何でついてきてるの?」

首を傾げて尋ねると、アルマは表情を変えずに答える。

「俺の瞳が好きなんでしょ?だからいっぱい見せたくて」

目の下の方を指で伸ばしながら、茶色い瞳を見せてくる。


やっぱり殺人犯の考えていることはよくわからない。

戸惑ってしまう。

僕は前の方へ向き直した。



「ねぇ、看守さん。少しいい?」

「どうした……!」


後ろを振り返ると、いきなり薄い唇を塞がれた。

僕の方が圧倒的に身長が低いので、腰を少し低くして貪るようなキスをしてくる。

柔らかい唇が重なり合って、なんだか心地よい。

頭がふわふわしてきて、何も考えられない。

しかもずっとこっちを見ている。



ダメだ。

相手は連続殺人犯で、人間をたくさん殺している化け物だ。

理性を保たないと、自分が自分でなくなる気がして唇から離れようとした。

が全く離してくれず、壁に背中を当てられ深いキスをしてくる。

彼の手が僕の看守服に触れて、シャツを着ていない素肌に当たる。

身体が熱い。


「ちょ、ダメだって。これ以上は」


彼は僕の願望を無視して、開いた口に舌を入れてきた。

舌の粘液が絡まり、彼の唾液が流し込まれる。

ドキドキと胸の鼓動が早まり、顔がトマトのように赤くなってしまう。

しかし彼はそんなことも気にせず、僕の胸をいじってきた。

没入乳首の先を指でぐりぐりと弄り、爪で引っ掻いたり押されたりした。

最初は全然気持ちよくなかったのに、徐々に手が速くなっていき何もわからなくなってしまう。

気持ちいい。もっと欲しい。


「はぁ…はぁ……」

舌が外れて赤い顔で息を吐く。

アルマは看守服を脱がせようとしたが、なぜかやめてしまった。

僕が怪我しているのに気づいたからだろう。


「本当はたくさん開発したかったけどさ。看守さんはエロいな。女の素質あるかもね」


ズボンの膨れたところを触りながら耳元で囁かれたが、切羽詰まった声で否定。

少し歩いて、彼の胸元から脱出した。


僕は男より女が好きなノンケだし、そんなわけがない。

気持ち悪いことはもう二度としたくないと、心に決めている。
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