脱獄


彼の行ったであろう倉庫は地下三階にある。

そこまで、階段を使って降りた。

エレベーターだと、途中で止まる可能性があるからだ。


地下三階は囚人が監獄されているところで、牢屋がたくさんある場所。

当然出られた囚人のいるSクラスの場所は誰もいない。

Aクラスにもいなかった。

脱獄したのは上位のやつばかりということだから、看守がやられるのも当然のこと。


とはいえ、誰が脱獄させたのだろうか。

それだけがいまだに分からない。

スパイの仕業かななんて思っていたら、倉庫についた。

スライド式の扉を開けて閉める。

誰にも会わなくてラッキーだな。



倉庫にはたくさんの棚が並び、中には段ボールやロープ、缶詰などいろいろなものが乗せられていた。


「こっちだ」


彼に導かれて奥の方へ歩みを進める。

何も疑うことなく後ろへついていき、棚と棚の間の床に座った。

僕も床に座って真っ正面のアルマを眺める。

相変わらず表情がわからないけど、クールでかっこいいな。


「脱獄するための方法を三つ考えた」


両手を使って三の文字を作り、僕に示してきた。

息を飲んでその話を聞く。


「一つ目は海に飛び込む作戦。二つ目はヘリコプターで脱出。三つ目は救命ボートで脱出だ。自分的には海に飛び込むのが一番面白そうだな。が、それだと自殺行為。助からない。救命ボートが一番安全だと考える」

「ヘリでも良さそうだけど」

「ああ。ヘリでもいいだろう。ただ、動かすには燃料が必要だ。途中で燃料が切れて、海の上に墜落したら最悪。まあ燃料満タンで行けばいい話だし、陸に着けば脱獄したことになるから救命ボートとどっこいどっこいかな。救命ボートなら人の手で漕ぐから、波が荒れて海に落下したら最悪だけど。浮き輪があれば大丈夫だろ。で、アンタ……いや、ヒロヤはどっちがいい?どっちにもメリットとデメリットはあるがな。俺ならリスクを承知の上で、ヘリがいいと思う」


そういえば、この人履歴書見たから名前知ってるよね。

でもその履歴書はどこにやったのだろうか。

後で聞いてみよう。
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