脱獄
監視室はその名の通り、囚人を監視する部屋。
たくさんの画像が壁一面に映し出され、彼らの一日が一目でわかる。
「囚人に人権もクソもないからな、トイレをしていたって監視は怠らない」
「へぇ……ジョニー先輩はここにいてどれくらい経ったんですか?」
「俺はもう六年働いてる。今日は休暇なのに、休みじゃないのはヒロヤがいるからな」
ベテラン看守がこちらを見ながら、少し口角を上げた。
ジョニーというジョナサンのあだ名で呼んだが、別に気にしていない。
指摘もされないし、嫌な顔もしていないのでほっと一息つく。
僕はまだ19歳の最年少だから、仕事において分からないことは多くある。
わざわざ自分のために来るということは、おそらく信頼されている証拠だ。
ふと、上司から画面の方に視線を向けた。
こちらを睨んでいる囚人がいるではないか。
肌が浅黒くて、目は深緑色のガタイの良い男だ。
まあ監視カメラ越しだから関係ないんだけどさ。
「あれは?」
「最近入ってきたNo.403336だ。さっきお前も話しただろ?」
隅っこの画面に、二人の大柄の看守に挟まれた白髪の青年が歩いている映像が映る。
彼の首には首輪のようなものがつけられているし、手首には頑丈な手錠がはめられていた。
彼の表情はどこか遠くを見ており、目の下にクマのようなものができている。
「首につけているのは、電撃の走る首輪だ。何か悪巧みをすれば作動する」
それを聞いて、上司の顔と画面を交互に見つめ返す。
囚人に人権がないというのは、そういうことかと思い知って驚愕した。
自分が囚人だったら、そんなことされるくらいなら死んだ方がマシだと感じる。
僕は初めて会った時から、彼のことがずっと気になっていた。
同性なんだけど、なんか話しかけたくなる存在。
もっと会話してみたいと思うのはダメだろうか?
ジョナサンに言っても、許してくれないだろうがな。