ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その2
麻衣
「雨の中、ご苦労様。ええと、自己紹介してもらおうかしら、まずは…」
「ええ、迫田リエです。よろしく」
「私は相馬豹子。こちらこそ、よろしくです」
「あの、この天気な訳だし、手早く済ませたいんで。こっちから言いたいこと、先に言わせてもらいます。私、一応女子高生ですけど、ここには”プロ”の交渉として割切って来てますから。それだけは承知しておいてくださいね。まずは」
おお、いきなり歯切れのいい宣言だわ(笑)
***
よし!
なら、こっちもぱっぱと行くか
「了解。話が早くていいわ。じゃあ、いくわよ。あなたにはさ、バイクの腕を見込んでこの場に来てもらったの。いい?相手が誰でも大丈夫ね?」
「ええ、大丈夫よ。それで?」
「あなたの”相手”は、高原亜咲。どう、やれる?」
「…ああ、OK、”相手”としても最高だわ。で、どういうシチュレーションなの?」
彼女、即答だった
余程、自分の腕に自信があるんだろう
”あの”亜咲さんの名前が出ても、顔色一つ変えていなかったし
「…うん。第一条件は高原さんを襲撃したというアリバイ、まあ、事実要件ね。従って、対決までは求めていないわ。ただ、実害要件は必須なのよね、今回は」
「それ、肝心なとこだからきちっと答えて欲しいんだけど、高原を傷つけろっていうことなの?」
彼女は真剣そのものの目つきをして、強い口調で私に詰問した
「ううん、あの人は無傷でお願いよ。ターゲットは”後ろ”に乗っかってる人間。そっちをお願いってこと。そういうことよ」
「…あのさ、はっきり言ってくれるかな。こっちも傷害罪とかは恐いんで」
この人、結構せっかちのようね
まあ、反応早くて、私は嫌いじゃないわ
では、そのものズバリ言ってあげる…
「あのね、ターゲットは高原さんの自宅の、隣の住人になるわ。そこの家の長女よ。高1の、足が速くて背の高い子。そいつが”うしろ”乗っかってる時、転倒なりで、ケガさせて。その際の細かい状況設定は、一切問わないわ。任せる、そっちに。仮に止まっている状態でしかけたって、こっちは構わない。どう、できる?」
「…」
うふふ…、さすがにちょっと動揺した様子だ
「あなたが無理なら、”本物”のプロを雇う。でも私としては、本ミッションはなるべくココ、」都県境の女にって気持ちなのよ。さあ、返事ちょうだい」
私は一気に畳みかけた
***
迫田リエはしばらく思案してから、はっきりとした口調で言った
「…」その前に、報酬を聞かせてもらうわ。このミッション完遂の対価は、いくらもらえるんですかね?けっして”楽な”仕事じゃないと思うけど」
「そっちの希望通り出すわ。ただし、”うしろさん”が被った実際の”度合い”によって、さじ加減はつけさせてもらう。その子、陸上部なのよ。できれば、カモシカのような自慢の足、折っちゃって。それがパーフェクト。そこからの差引きはこっちで判断ね」
「フン、あなた、相当にエグイね。しつこいようだけど、仮に大けが負わせて、警察とかは大丈夫なんでしょうね?ブタ箱行きなんて絶対イヤよ」
この辺が請負う立場としては、もっともデリケートになる点だよな
まあ、当然だわ
「相馬という苗字で察しが付くと思うけど、手回しは完全補償と思って事に当たって。もっとも、ヘマ踏んでその場で捕まっちゃったりなんかは自己責任よ」
「よく、わかったわ。じゃあ、ケガの度合いはなり行きもあるし、打撲程度で成功という解釈でいい?そのラインで3本ね」
「いいわ。5本出すわ、そこのラインなら。その上行けば、上乗せする。どう?」
「やるわ。じゃあ、細かい話を聞かせてもらいましょう」
これで、商談成立だ
迫田リエとは、このあと詳細を打合せした
亜咲さんが私のバイクの師匠であることも告げた…
この人、苦笑してたが、別に動じてはいないようだったな
まあ、ドライってことだろうが、ハートは強そうだ
とりあえず、実行場所等綿密に想定を行った上で、連絡をくれるということになった
***
先日、この計画を相和会の大幹部である剣崎さんに伝えた時、あの人は少々驚いた様子だった
私が亜咲さんを心底敬愛していることは、あの人も承知していたからね
剣崎さんからしたら、相馬さんに会って、きっと感化されたんだろうって
ふふ、でもねー、そんなレベルじゃないわよ
あの人から私の中に入ってきたもの…
感覚かな、あえて表現すれば
それが、元々あった私の”素養”と混じり合って、まあ、化学反応みたいなのを起こした
だから、劇的変化には違いない
私はあれ以来、相馬さんの言ったとおり、自分を挑発し続けている
言ってみれば、単に意識の転換を実践しただけかもしれない…
でも、これは相馬さんも言っていたが、誰にでもできる訳じゃない
相馬さんは、私ならそれができると、最初に会った時、既に見切ってた
もう、私、自分でも止められない…
そう確信している
麻衣
「雨の中、ご苦労様。ええと、自己紹介してもらおうかしら、まずは…」
「ええ、迫田リエです。よろしく」
「私は相馬豹子。こちらこそ、よろしくです」
「あの、この天気な訳だし、手早く済ませたいんで。こっちから言いたいこと、先に言わせてもらいます。私、一応女子高生ですけど、ここには”プロ”の交渉として割切って来てますから。それだけは承知しておいてくださいね。まずは」
おお、いきなり歯切れのいい宣言だわ(笑)
***
よし!
なら、こっちもぱっぱと行くか
「了解。話が早くていいわ。じゃあ、いくわよ。あなたにはさ、バイクの腕を見込んでこの場に来てもらったの。いい?相手が誰でも大丈夫ね?」
「ええ、大丈夫よ。それで?」
「あなたの”相手”は、高原亜咲。どう、やれる?」
「…ああ、OK、”相手”としても最高だわ。で、どういうシチュレーションなの?」
彼女、即答だった
余程、自分の腕に自信があるんだろう
”あの”亜咲さんの名前が出ても、顔色一つ変えていなかったし
「…うん。第一条件は高原さんを襲撃したというアリバイ、まあ、事実要件ね。従って、対決までは求めていないわ。ただ、実害要件は必須なのよね、今回は」
「それ、肝心なとこだからきちっと答えて欲しいんだけど、高原を傷つけろっていうことなの?」
彼女は真剣そのものの目つきをして、強い口調で私に詰問した
「ううん、あの人は無傷でお願いよ。ターゲットは”後ろ”に乗っかってる人間。そっちをお願いってこと。そういうことよ」
「…あのさ、はっきり言ってくれるかな。こっちも傷害罪とかは恐いんで」
この人、結構せっかちのようね
まあ、反応早くて、私は嫌いじゃないわ
では、そのものズバリ言ってあげる…
「あのね、ターゲットは高原さんの自宅の、隣の住人になるわ。そこの家の長女よ。高1の、足が速くて背の高い子。そいつが”うしろ”乗っかってる時、転倒なりで、ケガさせて。その際の細かい状況設定は、一切問わないわ。任せる、そっちに。仮に止まっている状態でしかけたって、こっちは構わない。どう、できる?」
「…」
うふふ…、さすがにちょっと動揺した様子だ
「あなたが無理なら、”本物”のプロを雇う。でも私としては、本ミッションはなるべくココ、」都県境の女にって気持ちなのよ。さあ、返事ちょうだい」
私は一気に畳みかけた
***
迫田リエはしばらく思案してから、はっきりとした口調で言った
「…」その前に、報酬を聞かせてもらうわ。このミッション完遂の対価は、いくらもらえるんですかね?けっして”楽な”仕事じゃないと思うけど」
「そっちの希望通り出すわ。ただし、”うしろさん”が被った実際の”度合い”によって、さじ加減はつけさせてもらう。その子、陸上部なのよ。できれば、カモシカのような自慢の足、折っちゃって。それがパーフェクト。そこからの差引きはこっちで判断ね」
「フン、あなた、相当にエグイね。しつこいようだけど、仮に大けが負わせて、警察とかは大丈夫なんでしょうね?ブタ箱行きなんて絶対イヤよ」
この辺が請負う立場としては、もっともデリケートになる点だよな
まあ、当然だわ
「相馬という苗字で察しが付くと思うけど、手回しは完全補償と思って事に当たって。もっとも、ヘマ踏んでその場で捕まっちゃったりなんかは自己責任よ」
「よく、わかったわ。じゃあ、ケガの度合いはなり行きもあるし、打撲程度で成功という解釈でいい?そのラインで3本ね」
「いいわ。5本出すわ、そこのラインなら。その上行けば、上乗せする。どう?」
「やるわ。じゃあ、細かい話を聞かせてもらいましょう」
これで、商談成立だ
迫田リエとは、このあと詳細を打合せした
亜咲さんが私のバイクの師匠であることも告げた…
この人、苦笑してたが、別に動じてはいないようだったな
まあ、ドライってことだろうが、ハートは強そうだ
とりあえず、実行場所等綿密に想定を行った上で、連絡をくれるということになった
***
先日、この計画を相和会の大幹部である剣崎さんに伝えた時、あの人は少々驚いた様子だった
私が亜咲さんを心底敬愛していることは、あの人も承知していたからね
剣崎さんからしたら、相馬さんに会って、きっと感化されたんだろうって
ふふ、でもねー、そんなレベルじゃないわよ
あの人から私の中に入ってきたもの…
感覚かな、あえて表現すれば
それが、元々あった私の”素養”と混じり合って、まあ、化学反応みたいなのを起こした
だから、劇的変化には違いない
私はあれ以来、相馬さんの言ったとおり、自分を挑発し続けている
言ってみれば、単に意識の転換を実践しただけかもしれない…
でも、これは相馬さんも言っていたが、誰にでもできる訳じゃない
相馬さんは、私ならそれができると、最初に会った時、既に見切ってた
もう、私、自分でも止められない…
そう確信している