ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その24
狂気のシンパシーが投じたもの③
そんな椎名の様子を察してか、タカハシは”先手”を打った。
「…ノボルさんの今の話を聞けば、そりゃあ、つくづくごもっともですよ。でも断っておくが、オレはここまで麻衣に動かせるフィールドを提供したそもそもは、ジャッカル・ワンを主とした過ぎた確信挑発的、先導的パフォーマンスによるところはあったとも思う。それ故、こうまで勢いに乗る麻衣の前に今、アンタが立つことは避けて欲しいんだ!」
大打ノボルも普段を超えるテンションだったが、対するタカハシもいつもとは断然と違った。
言うまでもなく、シュート・ドライの究極を実践している”この二人”がここまで熱くなっている実感は、その場の皆にもヒシヒシと伝わっていた。
「…剣崎さんあたりからすれば、正体をすでに掴まれているであろうこっちとしてはですよ…、麻衣のペースに乗ったと思われますよ。麻衣の婚約披露前では、一旦かわすチョイスが優先される。自分はそういう考えなんですよ…」
タカハシは一転、訴えるようだった。
「椎名はどうなんだ?」
すかさず武次郎が、彼とは同郷であるタカハシの主張に対する意見を問うた。
...
「…トータルで考えて麻衣は”ご指名”なんだし、ある意味、ヤツの婚約披露と言う節目前にノボルさんが麻衣を”量る”のは有意義だろうとも思う。何と言っても、こっちが見立ててる本郷麻衣の”弱点”が、ノボルさんの確証を得るかどうか…。これは、ナマの麻衣と対面することが必須だとも思うしな」
「…」
「…その上で、今タカハシが指摘した点はノボルさんも心して欲しんだ。ヤツを必要以上に意識した結果、かえってつけ込ませる余地を与えたと…。何と言っても、津波祥子をはじめ、赤塗りの実践者・紅丸有紀に覚醒された猛る女子高生たちの血を沸騰しちまったとは言えるんだ。もっとも、そのことはノボルさんが、少なくとも避けていてじゃあなかったと、ここにいる3人は見切っている」
ここでノボルは、やや口元をこぼしてしまった。
さしずめ、その胸中は…、”ビンゴだよ、椎名。だが、それはオレの望むところだったということも否定できないしな”…、であったのか…。
「…言ってみりゃあ、ノボルさんのこれまでのアクション効果で、奴らが秘めていたポテンシャルは言わば最強集団を作り上げ、そのことで他でもない東龍会に相和会の脅威を増してしまったと。…これは素直に自省してもらいたい…。オレとしては、それが条件だよ。ノボルさん…」
その場は一気に重苦しい空気で覆われた感があったが…。
「ああ、認めるよ。椎名、それにタカハシ…。オレが麻衣に熱くなることへは、二人からずっと忠告をもらってたしな。…だがな、オレには制御ができなかった…。ヤツに駆り立てられる気持ちはそりゃあ、胸がふん裂けそうだったよ…。だから、これからも、それは止められねーって…」
「…」
この時のカレの言葉は、おそらくこう続いただろう…。
”それを止めたきゃあ、お前らが先頭でやっていけばいい…”
4人の沈黙は十数秒だったが、その間に4人それぞれがとりあえずの結論を出した…。
そう…、”それ”はそれぞれの思いに従って…。
狂気のシンパシーが投じたもの③
そんな椎名の様子を察してか、タカハシは”先手”を打った。
「…ノボルさんの今の話を聞けば、そりゃあ、つくづくごもっともですよ。でも断っておくが、オレはここまで麻衣に動かせるフィールドを提供したそもそもは、ジャッカル・ワンを主とした過ぎた確信挑発的、先導的パフォーマンスによるところはあったとも思う。それ故、こうまで勢いに乗る麻衣の前に今、アンタが立つことは避けて欲しいんだ!」
大打ノボルも普段を超えるテンションだったが、対するタカハシもいつもとは断然と違った。
言うまでもなく、シュート・ドライの究極を実践している”この二人”がここまで熱くなっている実感は、その場の皆にもヒシヒシと伝わっていた。
「…剣崎さんあたりからすれば、正体をすでに掴まれているであろうこっちとしてはですよ…、麻衣のペースに乗ったと思われますよ。麻衣の婚約披露前では、一旦かわすチョイスが優先される。自分はそういう考えなんですよ…」
タカハシは一転、訴えるようだった。
「椎名はどうなんだ?」
すかさず武次郎が、彼とは同郷であるタカハシの主張に対する意見を問うた。
...
「…トータルで考えて麻衣は”ご指名”なんだし、ある意味、ヤツの婚約披露と言う節目前にノボルさんが麻衣を”量る”のは有意義だろうとも思う。何と言っても、こっちが見立ててる本郷麻衣の”弱点”が、ノボルさんの確証を得るかどうか…。これは、ナマの麻衣と対面することが必須だとも思うしな」
「…」
「…その上で、今タカハシが指摘した点はノボルさんも心して欲しんだ。ヤツを必要以上に意識した結果、かえってつけ込ませる余地を与えたと…。何と言っても、津波祥子をはじめ、赤塗りの実践者・紅丸有紀に覚醒された猛る女子高生たちの血を沸騰しちまったとは言えるんだ。もっとも、そのことはノボルさんが、少なくとも避けていてじゃあなかったと、ここにいる3人は見切っている」
ここでノボルは、やや口元をこぼしてしまった。
さしずめ、その胸中は…、”ビンゴだよ、椎名。だが、それはオレの望むところだったということも否定できないしな”…、であったのか…。
「…言ってみりゃあ、ノボルさんのこれまでのアクション効果で、奴らが秘めていたポテンシャルは言わば最強集団を作り上げ、そのことで他でもない東龍会に相和会の脅威を増してしまったと。…これは素直に自省してもらいたい…。オレとしては、それが条件だよ。ノボルさん…」
その場は一気に重苦しい空気で覆われた感があったが…。
「ああ、認めるよ。椎名、それにタカハシ…。オレが麻衣に熱くなることへは、二人からずっと忠告をもらってたしな。…だがな、オレには制御ができなかった…。ヤツに駆り立てられる気持ちはそりゃあ、胸がふん裂けそうだったよ…。だから、これからも、それは止められねーって…」
「…」
この時のカレの言葉は、おそらくこう続いただろう…。
”それを止めたきゃあ、お前らが先頭でやっていけばいい…”
4人の沈黙は十数秒だったが、その間に4人それぞれがとりあえずの結論を出した…。
そう…、”それ”はそれぞれの思いに従って…。