ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その25
狂気のシンパシーが投じたもの④


この日から約10後の、麻衣・撲殺男婚約披露セレモニーが伊豆で催される前日…、本郷麻衣は再び大打グループの根城であるジャッカル・ニャン
に乗り込んだ。
ここではついに、屈折した相互シンパシーの紡いだ”あの二人”は運命の初対面”を果たしたのだ。

大打ノボルは思い焦がれた意中の好敵手=不世出の極激元女子高校生…、本郷麻衣と禁断の接近遭遇を以って、心の貫通を経るのであったが…。



あの時…。
そう…、ノボルは今、モブスターズの仲間たち3人を目の前にして、”そのこと”を思いだしていたのだ…。

”椎名とタカハシは、ジャッカル・ニャンへ2度めの殴り込みを宣言した麻衣とオレが接触することに反対した。それは意思表示というよりも、オレへの訴えだったのだろう。それをはっきり悟った…”

「…この際、お前らには言っとく。オレは天才マンウォッチャー、タカハシから麻衣を筆頭に、この地の猛る女たちの実態・実情を散々教授された。オレだけでなく、ここにいる4人も、なぜあの坂内さんがあんなションベン娘どもの命までって疑問、都県境の地に通う間に理解できたはずだ。今回のスクラッププール決戦を見てみろ。あのバグジーとも、高校に通う女がほぼ五分で戦いやがった。それで、バグジーの心も奪った…。ハンパじゃあねえって、あの女ども。だろうが?」

3人は確かに頷いていたし、ノボルの言に異論はなかった。
だが、しかし…、ではあったのだった。

「…そしてオレたちの前にはだかる、メインの女があらわになったさ。本郷麻衣だとな。その麻衣は今や、相和会の有力幹部との婚約を公表し、事実上、組内部の人間になった。その上で、オレたちと坂内さんとのラインを周知して、オレたちに面と向かってケンカを売ってきてる」

この時、他の3人の目に写った熱弁するノボルへは、同じ思が胸に去来していただろう。

”麻衣を語る目は、旧来の大打ノボルではない…”と…。


...


「…西城がこっちと通じてることも、ガキのコネクションルートで旧建田組の間宮にオレ達が毒を嗅がせたこともキャッチしてるんだ、先方は。だが、タカハシが指摘したとおり、麻衣のスタンスは相和会の意図を背負ってって立場も、都県境のガキ勢力側と組んだって立場、いずれもその態度に示していない。フン…、ヤツはすべて計算づくで、大打グループに挑戦してきてるんだ」

麻衣を語るノボル…。
それは、”他を”忘れた、いや、放り投げたチーム大打のリーダーの姿に他ならない…。
それはもはや、この場で彼の言葉に耳を傾ける3人の共通認識に至っていたのだ。

「…いいか、ヤツと僕殺男の婚約披露のセレモニーが終われば、本郷麻衣は間違いなく相和会を巡る東西両大手にとってキーパーソンになる。その前に、麻衣のこっちへ挑む”立場”をこのオレが確かめない訳にはいかない。そういうことさ」

ここでノボルは大きく息をつき、手にしたタバコに火を燈した。





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