ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その3
追川
身長が180近い、がたいのしっかりした黒い革ジャンのよく似合う大柄の少女は、それ以上俺に尋ねてこなかった
彼女の連れの子は後輩のようで、体は二回り小さいが、目が鋭い
後輩の女の子は先輩をショウコさんと呼び、ショウコさんと呼ばれた大柄の子は後輩をシズミと呼んでいた
この二人…、その佇まいから見て、間違いなく南玉連合…、それも本郷麻衣が設立したレッド・ドッグスの現役主要メンバーだ‼
これはうまくすれば、麻衣の知られざる一面を探れるかもしれない…!
俺は興奮していた
...
「…じゃあ、おじさんの商店街でも、麻衣の”昨日”はいち早く伝わってるんですね?」
ショウコはシズミと目を合わせて、ニヤッと笑っていた
”首尾通りだね…”
二人の目による会話は、今の俺には明白だった
...
「もう、カミさん連中は朝も早うから、家事もそっちのけで麻衣ちゃんの話に夢中になってるんですよ。伊豆でのパーティーで数時間にして麻衣ちゃんは関西極道連中のアイドルに君臨したって、大騒ぎしてましてね。麻衣ちゃんが凱旋したら、サインもらうんだとか、一緒に写真とるんだとかって‥(笑)。まあ、私らも相和会には先代から何かとお世話になってるから、麻衣ちゃんのことはそりゃあ、お祝いしてますが、実際、どうだったのかなあ…。昨日の伊豆は…」
「私らに入ってきた第一報では、奥さん方がおっしゃってる通りですね。麻衣は西の大物の人達ほぼ全員から、ツーショット撮影を頼まれたってことですよ。麻衣は相和会と西とのつなぎ手になったんです」
「うーん、でも信じられないんだよな。その麻衣ちゃんは確か17歳だよね?そんな年端もいかない未成年の女の子が、やくざの幹部と婚約しただけで…。ああ、失礼。何と言っても、俺は麻衣ちゃんとは会ってないんでねえ、はは…」
「おじさんも麻衣さんに会えば分かりますよ。あの人は、そういうことができちゃうで人なんです!」
シズミはきりっとした目で、力強くそう”宣言”していた…
隣のショウコは、それを横目で苦笑いしながら、グラスを手にしてジンジャーエールを口にした
この絵柄…、何気にチェックポイントだな…
...
「こりゃあ、俄然、麻衣ちゃんに会いたくなってきたなあ…。ああ、マスターは会ったことあるんでしたっけ?」
「いえ。でも、この店には何度か来ていただいたみたいなんです。だから厳密には見かけてるはずですが…。ねえ、祥子ちゃん?」
「そうっすね。私とは2、3回かな。さすがのアイツもここじゃあ、おとなしくしてたらしいからなあ、ハハハ…」
ショウコのその笑いに合わせ、マスターもシズミも口を開けて笑っていた
ここで俺は、故意に”真顔”を崩さなかった
「…おじさん、機会があったらか麻衣と会ってください。愉快なヤツですから。それから…、プラスデンジャラス、アンドマッド、アンドクレージーなかわいいヤツなんで…。アハハハ…」
「祥子さん、めちゃくちゃな褒め言葉じゃないっすか!アハハハ…」
「…」
すでに麻衣の深いところ、ど真ん中だろう…
...
「お姉ちゃんたち、麻衣ちゃんとはどういう”関係”なの?同じ高校の同級生とか…」
ここで俺は、おもむろに核心を突いてみた
ショウコとシズミは互いに顔を見合わせ、ちょっと間をおいた後、ショウコの方が口を開いた
「”仲間”です。この夏まで南玉連合で一緒にやってました」
ショウコからは、すんなりと”直球”で返ってきた
...
「そう…。南玉連合って言えば、ついこの間、相模浦北の原野で対立する愚連隊の男達と対決して、蹴散らしたって聞いたけど…。あんたたち、凄いお姉ちゃん達なんだね」
「ハハハ…、おじさん達にも知れ渡ってましたか、あの決戦は。でも、蹴散らすまではいってませんよ。とてもそこまでは無理でした」
「おじさん、実際に屈強な男とタイマンで戦ったのは、ここにいる祥子さんなんですよ!結果はドローだったけど、判定からしたら祥子さんの勝ちでした。凄い戦いでしたよ、そりゃあ…」
「おい、静美、余計なことはいいって!」
ショウコはやや硬い顔つきになっていた
...
「いいじゃないですか、本当のことなんですから。私たちの”実際”のところは、都県境に住む大人の人達にもわかってもらった方がいいですよ。もう、そういう時期だし、その機運です、今が。だって、奴らはすでに…」
「静美!そのくらいにしとけって」
一瞬、その場は静まった
...
「ハハハ…、すいませんね。コイツが今話した後半は忘れて下さい」
シズミが口走った、”そういう時期”、”その機運”とは一体…⁉
ひょっとして、本郷麻衣以外の、ここの彼女たちはすでにボーダーレスなのか…‼
俺はハンマーで横殴りされたような衝撃を受けた…
追川
身長が180近い、がたいのしっかりした黒い革ジャンのよく似合う大柄の少女は、それ以上俺に尋ねてこなかった
彼女の連れの子は後輩のようで、体は二回り小さいが、目が鋭い
後輩の女の子は先輩をショウコさんと呼び、ショウコさんと呼ばれた大柄の子は後輩をシズミと呼んでいた
この二人…、その佇まいから見て、間違いなく南玉連合…、それも本郷麻衣が設立したレッド・ドッグスの現役主要メンバーだ‼
これはうまくすれば、麻衣の知られざる一面を探れるかもしれない…!
俺は興奮していた
...
「…じゃあ、おじさんの商店街でも、麻衣の”昨日”はいち早く伝わってるんですね?」
ショウコはシズミと目を合わせて、ニヤッと笑っていた
”首尾通りだね…”
二人の目による会話は、今の俺には明白だった
...
「もう、カミさん連中は朝も早うから、家事もそっちのけで麻衣ちゃんの話に夢中になってるんですよ。伊豆でのパーティーで数時間にして麻衣ちゃんは関西極道連中のアイドルに君臨したって、大騒ぎしてましてね。麻衣ちゃんが凱旋したら、サインもらうんだとか、一緒に写真とるんだとかって‥(笑)。まあ、私らも相和会には先代から何かとお世話になってるから、麻衣ちゃんのことはそりゃあ、お祝いしてますが、実際、どうだったのかなあ…。昨日の伊豆は…」
「私らに入ってきた第一報では、奥さん方がおっしゃってる通りですね。麻衣は西の大物の人達ほぼ全員から、ツーショット撮影を頼まれたってことですよ。麻衣は相和会と西とのつなぎ手になったんです」
「うーん、でも信じられないんだよな。その麻衣ちゃんは確か17歳だよね?そんな年端もいかない未成年の女の子が、やくざの幹部と婚約しただけで…。ああ、失礼。何と言っても、俺は麻衣ちゃんとは会ってないんでねえ、はは…」
「おじさんも麻衣さんに会えば分かりますよ。あの人は、そういうことができちゃうで人なんです!」
シズミはきりっとした目で、力強くそう”宣言”していた…
隣のショウコは、それを横目で苦笑いしながら、グラスを手にしてジンジャーエールを口にした
この絵柄…、何気にチェックポイントだな…
...
「こりゃあ、俄然、麻衣ちゃんに会いたくなってきたなあ…。ああ、マスターは会ったことあるんでしたっけ?」
「いえ。でも、この店には何度か来ていただいたみたいなんです。だから厳密には見かけてるはずですが…。ねえ、祥子ちゃん?」
「そうっすね。私とは2、3回かな。さすがのアイツもここじゃあ、おとなしくしてたらしいからなあ、ハハハ…」
ショウコのその笑いに合わせ、マスターもシズミも口を開けて笑っていた
ここで俺は、故意に”真顔”を崩さなかった
「…おじさん、機会があったらか麻衣と会ってください。愉快なヤツですから。それから…、プラスデンジャラス、アンドマッド、アンドクレージーなかわいいヤツなんで…。アハハハ…」
「祥子さん、めちゃくちゃな褒め言葉じゃないっすか!アハハハ…」
「…」
すでに麻衣の深いところ、ど真ん中だろう…
...
「お姉ちゃんたち、麻衣ちゃんとはどういう”関係”なの?同じ高校の同級生とか…」
ここで俺は、おもむろに核心を突いてみた
ショウコとシズミは互いに顔を見合わせ、ちょっと間をおいた後、ショウコの方が口を開いた
「”仲間”です。この夏まで南玉連合で一緒にやってました」
ショウコからは、すんなりと”直球”で返ってきた
...
「そう…。南玉連合って言えば、ついこの間、相模浦北の原野で対立する愚連隊の男達と対決して、蹴散らしたって聞いたけど…。あんたたち、凄いお姉ちゃん達なんだね」
「ハハハ…、おじさん達にも知れ渡ってましたか、あの決戦は。でも、蹴散らすまではいってませんよ。とてもそこまでは無理でした」
「おじさん、実際に屈強な男とタイマンで戦ったのは、ここにいる祥子さんなんですよ!結果はドローだったけど、判定からしたら祥子さんの勝ちでした。凄い戦いでしたよ、そりゃあ…」
「おい、静美、余計なことはいいって!」
ショウコはやや硬い顔つきになっていた
...
「いいじゃないですか、本当のことなんですから。私たちの”実際”のところは、都県境に住む大人の人達にもわかってもらった方がいいですよ。もう、そういう時期だし、その機運です、今が。だって、奴らはすでに…」
「静美!そのくらいにしとけって」
一瞬、その場は静まった
...
「ハハハ…、すいませんね。コイツが今話した後半は忘れて下さい」
シズミが口走った、”そういう時期”、”その機運”とは一体…⁉
ひょっとして、本郷麻衣以外の、ここの彼女たちはすでにボーダーレスなのか…‼
俺はハンマーで横殴りされたような衝撃を受けた…