ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その3
ケイコ



3人はしばらく、私の膝に乗っかってる麻衣のレポート用紙に視線を落としていた

おそらく全員が、麻衣が描いたへたくそなバグジーの絵を見ていたんじゃないかな(苦笑)

推定握力100キロの敵をね…


...



「うーん、このパターンで祥子が相手に持ち上げられたとしてさ…。なにより第一なのは、いかに早く脱出して、ダメージを最小限にとどめるかだよね、要は…」

私の発言に、祥子と多美は「うん」と頷いた

「イメージとしては、どんな感じかな…。多美、ちょっといいか…」

私は膝のレポート用紙2枚を祥子に預け、その場に立ちあがり、多美にも促した

まず多美に私の首を右手で掴ませてね

私は両手を、自分の首に巻き付いている多美の手に当て、かかとを上げて背伸びした態勢をとった

「人間の心理としてはさ、どうにもならないのを分かっていながらも、こうやって首を絞められ、なおかつ吊り上げられれば、両手は自然とこうなるでしょ、普通は」

「まあ、そうだな」


...



「祥子、そりゃあ、息が出来ないほど苦しいだろうから、思わず両手を首に持ってっちゃうだろうけどさ、この局面では、絞首刑攻撃から逃げ出すのが最優先になる。せっかく両手、更に両足がフリーなんだから、それを有効に使って抜け出す攻撃を考えないと」

「そうか!こっちはある意味、首以外は責められてないんだよな!そうなると…、単純に考えて、ケリとパンチ、チョップとかの打撃系技かな」

「多美、まずは相手の状態もちゃんと把握しないとな。相手だって、片手で吊り上げてんだから、右手以外は使える。中途半端に殴っても効き目がなかったり、防がれるだろう。その点を考慮に入れた上での攻撃でないとな。となると…」

祥子はそう言いながら、私の首を握っている多美の横に立ち、いろいろイメージを沸かせているみたいだ


...



「祥子、なにしろ、相手が思わず手を放さざるを得ない、そのくらいの威力でなけりゃ意味ないと思うんだ」

「ああ、おけいの言うとおりだ…。うーん」

今度は祥子、首を掴まれた私の後ろに回った

「あのさ、すぐに思いつくのは、持ち上げられて足が宙に上がってるんだから、相手が男ってことで、急所へのキック攻撃だろう」

「ああ、それなら手っ取り早いね。祥子が思いっきり蹴り上げてやれば、まず放すと思うよ」

「でもなあ…、やっぱり”反則”になるよな。汚いマネは極力避けたいよ。その後は相手だって頭に血が上って、向こうも汚い手に出れば、危険な展開になる恐れがあるし」

祥子は単なる腕っぷしが強い大女ではなく、ハートも強靭な好漢なんだよな




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