ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その5
砂垣


「あんだー?このお冷はよう…。だ埼玉人は、こんなくせえ水飲んでんのかよ」

「臭いだけじゃないわ、これ…。不純物うじゃうじゃだよ。全く、こんな水飲んでて腹壊さねえーんだからさあ、だ埼玉星人の胃袋はすげーな」

いやあ…、大場の人選は冴えてるわ

何ともズべ丸出しのビジュアル、”今日の役どころ”には格好だな(笑)


...



決行現場の喫茶店内には、すでに”招待”していた4名様がご到着している

ズベ二人の斜め後ろの席で、訝しげな顔だしな

ふふっ…、連中がしゃしゃり出てくるのは時間の問題だろう

「おい、店の人!この水、NGなんでチェンジお願いしまーす!」

早速、男の店員が出てきたわ

「…お客様、どうされましたか…?」

「私たち、東京人なんで、”よそ行き”のお冷をお願いしますよ」

「あのう…、特段、臭いも不純物もありませんが…。他のお客様からはそのようなご指摘は、一度もいただいたことがございませんので…。もし、そう言うことでしたら…」

はは、店員もキッパリだわ

「ふざけんなっての!だ埼玉の走り連中みたいなのと一緒にすんなよ。奴らは汚いもん喰いなれてるから、平気なんだろうさ。私らはよう、水質くらい、全国基準で頼むって言ってるだけだろーが!」

しかしでけえ声だな、本日のズベちゃんは(苦笑)

店内の客がみんな固まってるよ


...



「…おい、お前ら!いい加減にしろ。お冷ひとつでギャアギャア因縁つけやがって。みんな、迷惑してるんだ。気に入らねえんだったら、他行けばいいだろーが」

ハハハ…、早くも4人が乗ってきたわ

ズべのテーブル前でタンカ切ってんのが、おそらく”タ-ゲット”だな

「おお、出てきたわ。だ埼玉人が…。ひょっとして、お前ら、かの有名な赤い犬ころか?」

「なら、どうする、やるのか!」

リーダー格がそう凄むと、一人が店員に耳打ちしてる

”こいつらには、外で私らが話しつけますから…”

まあこんなところかな…

よし、予定通りの展開になるぞ


...


「あんたの友達に手ぇ出した奴、確か新村ってヤツだったわね?」

「ああ、レッドドッグスのアタマで張り切ってるってダサイ女だったわ。いるのかな、こん中に?」

ほう…、ズベ二人もなかなか”段取り”を心得てるようだわ

「私だよ!で…、どうすんだ?」

「フン、表で話と行こうか」

よし、ターゲットに間違いなかった

絵図通りに次へ行けそうだ

6人が店を出た後、オレもレシートを掴んでレジに向かった





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