ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その8
真樹子



「もしもし…。ああ…、久美かい?」

「真樹子さん‼…今、門前本町の喫茶店前で、静美がさらわれました!私、私、偵察で…。だから…」

「えー、新村が⁉」

ついにヤツら、挑んできたな!


...



久美からは、新村静美らが怪しい男に呼び出されてたって聞いていたけど…

で、久美は1年の後輩連れて二人で張ってたらしい

1年には南玉に戻って、祥子に知らせるように指示を出したってことだ

「久美、とにかく落ち着くのよ。…じゃあ、他の3人は解放されたんだね?」

「ええ、相当やられましたが、みんなバイクは自分で運転して今さっき、急いでここから立ち去りました。あっちは、砂垣や大場もいましたし、奴ら大勢で…、4人を囲んで…!静美はバカでかい男に顔面を掴まれたまま、車に押し込まれて…。たぶん例のバグジーって刺客ですよ!」

久美のその口調には、悔しさと怒りが混じっていたのが伝わったよ

しかし、いくら自分より小さい女とは言え、頭を掴んだまま人間を持ち歩くなんて…‼


...


「私、あえて何もしませんでしたよ。3人にも接触しないで。そう言う指示だったから…。でも、よかったんですかね。私辛くて…」

「久美、それでいいんだよ。4人をこっちが張ってるって、気づかれないことが優先だったんだから。…いい?あんたはすぐに横田にコトくを知らせて、ベッツに来て。私は主だった連中に連絡して、集めとくから」

「はい!じゃあ、真樹子さん、後ほど…」

久美は一生懸命だ

頑張れ…


...



「そう、静美がね…。真樹子さん、おそらく、お誘いでしょ。3人には伝言持たしてるわよ。どこどこ来いって。そこでご挨拶ってことになるかな…。静美には必要以上の危害は加えないと思うし、まあ、奴らも必死よ」

「なら、こっちは総力投入してやるか。向こうは4人にバグジー入れて10人で来たってっから。数ならこっちが上回ってるって分からせてやる‼」

「まあ、そこでやり合うことは避けるべきだけど、向こうの連中にこっちの戦力を見せつけるにはいい機会ね。ただ、後方待機とか、威嚇目的でね。あくまでも砂ちゃんの前に出るのは、4,5人に抑えた方がいいわ」

「そうね。祥子は不可欠にしても、急だから他は誰が揃うかはわからないけど…」

「私は部外者だから、余計な口は挟みたくないけど、久美は連れてってやって。静美を助けに行く立場だからね」

「ああ、そう言うことね…。わかった、私も南玉の人間じゃないけど、うまく誘導するわ」

「あと、おけいも祥子につけてた方がいいわ。現場で咄嗟の判断が求められる状況下では、おけいが頼りよ」

「了解したわ。まあ連絡するわよ」

麻衣さんは静美が捕えられたにもかかわらず、終始冷静だった

ふう…、やっぱり麻衣さんはさすがね…






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