ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その12
砂垣



俺はバグジーのそばに寄って行った

「だいぶ暗くなってきたな。先方はじき到着するから、そのつもりでいてくれ」

「ああ、いつでもいいぜ。一体どんな奴が現れるのか…。楽しみだな」

「フン!女だと思って甘く見てたら、やられちゃうよ。南玉には、アンタに体力負けしない女だっているんだ!根性なら、ここの女たちが日本一なんだ」

新村静美は麻衣を信奉し続けてきたらしい

タメ年なのに、今だに”さん付け”してるってことだしな


...



「お前、もし、ここで俺たちが集団で暴行したら、どうする?当然、抵抗はするだろうが、結局は力尽きる。なら、麻衣みたいにできるか、お前にも?」

「…私にはできないと思うさ、悔しいけど。だから、麻衣さんは凄いんだ!アンタなんか、麻衣さんには一生勝てない!」

縄でタイヤにぐるぐると巻かれている新村は、そう言って俺に喰ってかかった

「お前、本郷麻衣みたいになりたいのか?」

ここで、バグジーが珍しく会話に口を挟んできたよ…

「憧れてるんだ、あの人に。所詮、自分がああいうふうには生きられないのは知ってるけど…」

「麻衣は、いつか人を殺すぞ。若しくは、その前に殺されるかもしれない」

「どういう意味だよ、それ!」

「簡単さ。そういう事態に面と向かったら、躊躇わないってことさ。それは、逃げないという意味でもある。命を奪うのも、失うのもな。ましてや、麻衣って子はそういう状況へと、意識して自分を持っていってるような気がする…」

「なんで、そんなこと分かるんだ、アンタに」

「俺にもそういうところがあるからな。まあ、あの子ほどじゃないが…」

「…」

俺も新村静美も、ここで言葉が途切れたよ

いい加減、頭がおかしくなりそうだわ

やっぱりバグジーは麻衣と同類だって

イカレてるよ、本格的に…


...



「おーい、砂さん!どうやらもう来るぞ、女どもが‼」

来たか!

「偵察の話じゃ、ここから2キロ先でバイク4台だそうだ。さしずめ、どっかで止まって、こっちの状況を確かめてるってとこだろう」

「よし、ここへはその4台だな。後続もおっかけ到着するはずだ。引き続き、抜かりなくチェックさせといてくれ」

「わかった」

「と言うことだ、新村。向こうがこっちの提案をむげにしなけりゃ、”おうち”に返してやるからよ」

「フン!そっちに都合のいい条件なんか飲むもんか。突っぱねるさ、祥子さんは!」

どこまでも憎まれ口が絶えない女だな、コイツ

「バグジー、お待たせしたな。まもなく、お前の相手になる女がお越しだ」

バグジーはニヤリともせず、巨大な右手を握ったり開いたりさせてる

うす暗い中で見るその不気味な動きは、エイリアンの口みたいだ




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