ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その13
ケイコ



相模浦北の廃車プールには、約30分の移動時間を要した

この周辺はほぼ平坦な原野で、明るいうちなら見通しはいい

っていうか、良すぎか…

これじゃ、後方待機は丸見えだ

一方、相手側はスクラップの山で身を隠すことが出来る

これからすぐ暗くなるし、岩本さんは、どんな編成で配置するかな…

私たちは、一旦遠巻きに全景を見渡せる位置で単車を降り、相手の陣営を確認した

少しばかり暗くなりかけていたが、連中は薪もたいてて、肉眼でもなんとか見える

「祥子、思ったより多いね。ざっと見ても、30人は軽く超えてるんじゃない?」

祥子の横で馬美がそう指摘した

「ああ…、スクラップの陰あたりにも潜んでたら、もっと多いかもな」

うーん、確かに目に入るだけで40人近いから、50人以上って可能性もあるか…


...



「どうします、祥子さん…。岩本さんたちが到着するまで待ちますか?」

「いや、静美が待ってるんだ。すぐ行こう。ええと…、あそこの中央が本陣ってとこだろうから、一気に走ろう」

「うん…」

皆はうなずいて、足早に単車へ…

「今行くからね、静美!」

そう呟いた久美は、舌唇を噛んで前方を見据えた後、バイクにまたがった

「おけい、行くよ」

「おお!」

私はそう言って、勢いよく久美の後ろに乗った

ブブン、ブーン、ブブーン…

4台のバイクは祥子を先頭に、敵前へとまっしぐらだ


...



積みあがったスクラップに囲まれた本陣(?)に着くと、私らはバイクを止め、ヘルメットを外した

砂垣さんを中心に、10数人が私らをお出迎えしてくれてる

「よー、南玉の皆さん、ウエルカム!」

「砂垣さん…、久しぶりっす。津波です。南玉は今、私が引っ張ってますんで、ご承知ください。早速だが、新村静美を返してもらいましょう。まさかとは思うが、傷つけたり、乱暴なんかしてたら黙ってないよ」

「祥子、お前に会えるの楽しみにしてたぜ。友達はあそこの裏にいる。無論、ここに連れてからは、手出しなどしてないから、安心しな」

「よし…」

私たちはちょうど人間の背丈くらいの高さに積んである、廃車の裏に進んだ

「あっ、あそこ!静美がいたよ‼」

久美が大声を上げた

「静美ー‼」

静美は私たちの10Mほど離れたところで、廃タイヤの束に縄で縛られていた…





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