ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その14
ケイコ



「あーっ、みんなー!」

「静美ー‼迎えに来たよ…」

「久美ー‼」

久美が先頭を切って、その後、私たちは一斉に静美の元へ駆け寄って行った

「ちょっと待ったー!」

すかさず、静美の正面を10数人が塞いで、私らを制止した

「まあ、慌てんなって。アイツの縄説く前に、ちゃんと話をしようや、なっ(薄笑)」

「よし、そっちの話とやらをまず聞こうか」

祥子は砂垣さんの正面に立ってるが、体格では勝ってるしね



...



「最初に、そこの男を紹介しなきゃな…」

砂垣さんはそう言って、一度顔を後ろに向けた後、再び私たちの方に向きかえり、ニヤリと笑った

私たちの視界に入ったのは、タイヤに縛られている静美の脇に立っている大きな男だった…

「祥子、あいつだよ‼凄い握力の化け物は…!」

久美が指をさして叫んだ

「おい、おい…。今ちゃんと紹介するからよ、お嬢ちゃん。こっちにいるのは通称バグジーだ。…バグジー、こいつらが、南玉連合の主力だよ。挨拶してやってくれ」

「…俺は柴崎ってもんだ。最初に言っとくが、俺は相手が女でも完璧につぶす。そう言うことだ」

タバコを吹かして立っている大男はぶっきらぼうにそう言うと、火のついたタバコを右手で握り潰して見せた

「なんだよ、あれは…⁉」

拳を握った大きな右手の指の間からは、タバコのケムリが漏れて夕闇に溶けていった


...



私たちはその異様なデモンストレーションに、思わず立ちすくんだよ

「ハハハ…‼では、今後についてお話ししようぜ。まあ、今回は効率よくいきたいと思ってな。このバグジーと戦う勇気のあるもんがいれば、来週の金曜日夜7時、ここでタイマン勝負を開催したい。そこで互いの雌雄を決着だ!」

いきなり来たぞ!

「…こいつが勝てば、お前らのおひざ元で、我々は好き放題やらしてもらう。負ければ、おとなしく退散するよ。お姉さん方、それでどうだね?」

砂垣さんは単刀直入だった

さあ、祥子が口を開くぞ


...



「その人の相手は私が勤めよう。タイマン勝負を逃げるつもりはないよ。だがよう、砂垣さん…。その前に、何か忘れてねえか?」

砂垣さんの顔色が微妙に変わった…

「南玉連合、リーダー格の一人、本田多美代を襲った件は、どうすんだよってこと!どう落とし前つけてもらえんですかね?まさか、今さら、あれは関知してないとかって、すっとぼける気じゃないですよね?」

祥子もストレートに出たわ

「…たしかに、本田を襲ったのは俺の指示だよ。認める。あんときゃ、バックから派手にやれってせっつかれてたんで、張り切ってバーナー持ち出してな。まあ、やり過ぎだった気もするが、お互いつぶし合いで戦うのは、暗黙だったろうが。それで了解願いたい」

砂垣さんはきっぱりと突っぱねてきた…






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