ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その15
ケイコ



「ふざけんなー!ケジメはどうなってんだ‼」

ここで大きな声を上げ、砂垣さんに詰問したのは1年の克子だった

隣りの久美は、顔を真っ赤にした克子の肩に手を当てて、まあまあとなだめてる

この二人の溝も、すっかり埋まった気がするよ…

「砂垣さん…、今、ウチの1年が言ったこと、私からも要求させてもらいますよ。ケジメ、しっかりつけてもらいましょう。どうなんですか?」

間髪を入れず、祥子が砂垣さんに迫ったぞ

さあ、砂垣さんはどう出るんだ!


...



「いやだと言ったら…」

「イエスをいただくための、”手段”に出ます」

「ふん!そんなのハッタリだ!こっちには人質がいるんだ。やれるもんならやってみろや!」

ここで砂垣の横にいる男が横やりを入れてきたわ

すると、それに対し静美が私たちに向かって叫んだ

「祥子さん!こんな脅しなんか無視して、こいつらやっちゃってください‼」

静美…

「この女…、人質の分際でほざくなって!立場、分からせてやる‼」

あっ…

その男が、静美の髪の毛を掴みやがった…

「静美ー!」

私たちは前屈みになって、全員が静美の名を叫んでいた


...



「蘇我、やめろって!」

砂垣さんが制止すると、蘇我と呼ばれた男、静美の髪の毛を離したわ

「フン、どうせこの女ども、5人じゃ何にもできねえよ!」

「蘇我さん、うっさいって、アンタ!砂垣さんに聞いてるんだからさ。…いいか、静美にもう一度手ぇだしたら、承知しねえからな‼さあ、砂垣さん、どうしますか?」

「うーん…、オレとしても、強がりのハッタリじゃねえってんなら、見たい気がするんだよな、ヘへ…」

「…そうですか。では、その目でしっかり見ちゃってください…。久美ー‼」

「はいよー!」

ピピーッツ‼

久美は、いつの間にか手にしいてたホイッスルを口に咥え、思いっきり鳴らした

うわー!

隣だから耳に響くわ…


...



ブブブーン、ブン、ブン、ブブブーン…

程なくして、バイクの走行音が凄いスピード感で反響してきた

どうやら2台のようだ

「来た!」

久美は西側方面を指さした

ブブブーン、ブブーン、ブーン、ブブブーン…

「おい!なんだ、ありゃあ…、一輪車みたいなもんを引いてるぞ。あっ!後ろからはもう一台…」

砂垣さんの取り巻き達は、2台のバイクがやってくる方向に釘付けだ

「おい、砂さん、あれは…⁉」

ブブブーン、ブン、ブン、ブブブーン…

なんと先頭のバイクは、車輪が外れた一輪車の荷台面に、男を二人括りつけてるよ!

そのバイクはもうすぐ、私たちと砂垣さんらの間を通過するぞ

ややスピードを緩め…、ああ、後ろのバイクが逆にスピードを上げた…


...



「先頭のバイクは片桐さんだよ!」

久美が叫んだ

その先頭バイクがまさに私たちの前を通過する間際、後ろのバイクが一輪車と先頭バイクを繋いでるロープに向かって、カマを振り下ろした!

「エイーッ!」

大きな掛け声は、私の耳にはっきりと届いた…

と同時に、2台目のバイクを運転する女性(?)は、バイクから切り離された荷台を左足でバイク上から蹴り返した

すごすぎる…!




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