ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その4
ケイコ



矢吹先輩の発言は続いた

「…そこで、序盤の相手がまだスタミナをほとんど消耗していない時点での反撃パターンを、少々変更しようかと思っています。それは…」

「賛成ー!」

矢吹先輩の提案に、場内からは一斉に声が上がった

無論、私も賛同だよ

「次に…」

先輩が切り出した”次”は、闘い全体、いわばトータルでの、スタミナ面からの切り口による考察だった


...



「…祥子は、大柄でパワーがある反面、スタミナに難があると自身も認め、すでに以前からその克服に向け、鍛錬を重ねていました。私との一連のトレーニングでも、祥子のサイズとは思えないほどの持久力は実感しましたが、果たして大柄の男と組み合って、どうかという不安材料がありました。しかし、それは限りなくゼロに近かった…」

ここで、ものすごい拍手喝さいが沸き起こった

「いいぞー、祥子!絶対勝てるぞー」

「津波ー!サイコー!」

それに対して、赤いタオルを首にぶら下げた胡坐姿の祥子は、スポーツドリンクを持った左手を上げ、舌を出してベーだわ…

場内は大爆笑だ

そして、隣で片膝をついて汗を拭っていた墨東会の白石さんが右手を差し出し、祥子と固い握手を交わした

ここで、館内は祥子コールが沸き起こり、更に程なくしてそれはウェーブと化した

私は、今、すごい場に立ち会っている…


...



「私からは以上です。完璧を期す意味で、ここにいるみなさんからもお気づきの点は、どんどん指摘してください。この祥子は決してたじろぎません!」

南玉連合元総長補佐、矢吹鷹美先輩‥

この人が祥子のコーチ役を引き受けてくれたのは、とてつもなく大きい…

去年夏、麻衣の陣営として、矢吹先輩の黒沼高を壊滅させた部隊の先頭を切っていた祥子への指南役に、この局面で白羽の矢を立てた相川先輩の目利きは凄いよ

もっとも、過去の因縁を大義の前にさらりと洗い流せた、矢吹さんと祥子が凄すぎなのは言うまでもない…




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