ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その5
ケイコ



その後、いろいろと意見は出た

それらの指摘には、祥子も矢吹さんも真剣に耳を傾けていたよ

この時の二人の目…

私には、それを言葉にできない…

そして…

私はいつの間にやら、両目から涙をこぼしていた


...



「おけい、どうした…?」

隣に立っていた多美が私の顔を覗き込んで、コイツらしくないローテンションの口調で囁いてきた

「多美…、私…」

これ以外、私は言葉を選べなかったよ

ぽたぽたと、自分でも大粒と自覚できる涙粒が床に落下する様を自覚しながら、多美の顔をじっと見つめてた

「おけい…」

多美は左腕を私の肩にかけ、ぎゅっと、抱き寄せてくれたよ…

おしゃべりな多美は何も言わず、私たちの正面に佇む祥子へ視線を共にしてね…


...



「よし!明日は絶対勝ちに持って行けるぞ、みんなー‼」

岩本さんは右手でこぶしを作り、大きく頭上へ振りかざした

「おおー‼」

もう館内はそれに呼応する、怒涛の歓声でどよめいていたよ

「みんなー、ここで祥子から一言もらおう!」

「おう…、祥子さん、私たちに熱い言葉を下さいー!」

新村静美だ…

「祥子!祥子…!」

凄いコールが起こってる

私はまだ涙が止まらない…


...


「みんな‥、明日のちょうど今頃、廃車プールでは、バグジーこと柴崎典男と雌雄を決している最中だ。奴と実際に戦うのは私だが、私は一人で戦ってはいなだろうよ。みんなと一緒にだ。それは、別に大勢であの難攻不落のバグジーをやっつけるって意味じゃない。それだけで、ここにいる、かけがえのない同士面々には理解してもらえると思う。男も女もなく…」

ここで、歓声とコールと涙を鼻ですする音が重なって、ひとつの旋律を成していた

言うまでもなくその旋律は、ここに集うすべての人の心を躍動させるものだったろう






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