ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その7
ケイコ



「横田さん…、あなたとはこれまで、お互い見掛け合ってたり、先日も廃車プールでは一緒に居合わせたけど、言葉を交わすことはなかったわね。改めて、ご挨拶させてもらうわ。私、迫田リエです」

「横田競子です…」

私は無意識に”初めまして”が口に出かかったが、それはあえて飲み込んだ…

「ああ…、みんな、ここは外そうぜ」

祥子はかつての盟友だった迫田さんと一度顔を合わせてから、多美と久美に向けてそう提案した

多美と久美は頷いて、この場を後にしようとしたんだけど…

「久美はここにいて。今から私と横田さんが話すことに、立ち会ってほしいのよ」

「でも…」

久美は祥子の顔を覗き込んでるわ

「じゃあ、久美、そうしてくれ」

「…わかった」

祥子は迫田さんの意を察したようだった


...



「横田さん…、1年前、高原亜咲の自宅前であなたたちをバイク上から襲ったのは、この私よ。もっとも、あなたはとっくに承知のことでしょうけど」

迫田さんはいきなり、”そこ”にきた

「ええ、存じていました…」

「依頼主の豹子…、いや本郷麻衣から私が請け負って、その通りに実行した。それもご存知よね?」

「はい…」

「あなたからすれば、なぜ今さらってことでしょうね。…私がここで告白したのは、あなたに謝罪するつもりからじゃないわ。私のやったことは傷害行為だけど、あくまで有償で依頼を請けたと割り切ってるし、後悔の気持ちは全くないのよ。ただ、あなたに対して懺悔の気持ちがあるのは否定しないわ」

「…」

「結局何が言いたいんだって、そういうことになるわよね。横田さん、あなたからすれば…」

すでに久美は下を向いてる

久美はいつも、いつも、ずっとこうやってみんなの間で、毎回こんなしんどい場面の証人を勤めてきたんだよな

誰にでもできることじゃないわ、やっぱり…




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