ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その8
ケイコ



迫田さんは淡々と”立ち話”を続けた…

「…それで、あけっぴろげに言わせてもらうわ。この件は、法的時効には程遠いし、私を真犯人として突き出せば、手続きを踏んで刑事罰、行政の処罰、そして民事の責任も私に対して追及できる。それからは、私、逃げるつもりなどないわ」

彼女はきっぱりだったよ

「…それをあえて、お話ししたかったの。できれば、それに対して、あなたの心つもりを聞かせてもらえると助かるんだけど…」

「…お答えする前に、亜咲さんにも今の時期なら、同じこと言えますか?」

「…」

迫田さんは即答できなかったと言うより、しなかったんだろうな

この間、彼女の表情は微妙に険しかったわ

そして15秒ほどの間をおいて…


...



「…高原さんには、無理だったでしょうね。はっきり言って、彼女とは諸々あったし…。でもあなたへは、面と向かった時に私の正直な気持ちを伝えたいと思っていたの。1年前からずっと…」

私の印象は、迫田さんが終始、ポジティプな目だったってこと

そして、自分にとても素直に生きてるとも感じた

この人が、嵯峨ミキさんや亜咲さんとの間に個人的な確執があることは把握していたよ

それはいずれも、夢であったスタントマンへの道を立ちふさがれたという、無念の思いに機縁したらしいことも…

だけど噂では、とてもドライな考え方の人だと聞き及んでいたから、今回ミキさんとの対面を拒否したこととかも、ちょっと意外だったんだよね

でも…

この時の迫田さんからは、二人へのどうしても割り切れない複雑な感情みたいなものが伝わったわ

それでも、去年のあの一件では、自分が真犯人だったということを明かしたい気持ちも持ち続けてきた

おそらく、苦しみながら…





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