ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その10
砂垣


ついに金曜決戦の夜が来た…

夕方5時には薪を焚いて、”会場”の設営にかかっていたよ

”会場”となるここの原野一帯は、ある変わり者の地主が所有しているらしいや

とにかく、金くれりゃあ何でも受け入れOKってことで、このあたりは産廃の山になってるもんな

要は環境問題とかのモラルなど関係なしで、所有者がOKなんだから文句なかろうとね…

さらに、何かのイベント貸し出でしも、金払うんなら騒ごうが何しようが、これまたノープロブレムよとくる

さすがに対価は安くないが、ここはウチらもよく使わせてもらうんだ

そこで、今日の女どもとの決着の場に落ち着いた訳でね…


...



とは言え、地主である70代の爺さんは、行政や取締り当局からも目をつけられてるって噂だ

なので、金くらいたんまりもらわなきゃ、ワリ合わねーだろってとこかな…

何しろ、法律に触れてるって主張するんなら、裁判でどんと来い

逮捕するんなら、根拠示せと迫ってるってこったわ

ハハハ…、豪快過ぎてスカッとするよ

この割り切り方、俺、嫌いじゃないぜ


...




バグジーはすでに到着している

盛んに水路沿いでフットワークに没頭していたんだが、ちょっと一服ってことで、薪の近くにいる俺んところへ寄ってきた

「…砂垣、聞いていいか?」

「なんだ?」

「今日のメインジャッジ、南玉連合側の女の子に依頼したそうだな。なんでまた、その子に話しを持って行ったんだ?」

「ハハハ…、お前、ひょっとして、俺がなにやら策を画してるとかって勘ぐってるのか?」

「いや、そうではないと信じて、確認してるんだ。やはり、こういう状況だ。いやでもいろいろと耳に入ってくるしな。…何でも、その子、南玉の元リーダー格だったとか…」

「ああ、そうだよ。ふふ…、横田競子って言う名前なんだが、1年前、麻衣と火の玉川原でサシの決闘張ってさ、ドローに持ち込んだ子だ」

「…」

この時のバグジーは、何とも言えない顔つきになっていたな


...



「…それをこの夏、亡くなった相和会の相馬会長に見染められて、ついこの間まで麻衣と共に南玉連合を引っ張っていたんだ。ああ…、先週のここにも居合わせてたぜ、彼女。カモシカのような長い足をした背の高い子だ」

ここまで告げると、バグジーは横田競子の見当がついたみたいだ

「砂垣、まだ俺の質問に答えていないぞ。あえて、その子にジャッジを持ち込んだ理由だ」

ああ、わかってる、バグジー

今答えるさ





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