ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その11
砂垣



「横田という子は、まあ、こんなところでケンカする連中とは似つかわない、ごく普通の女子高校生だよ。いや、今は事情があって、元女子高生だ。この夏、警察に厄介になっていてね」

バクジーは、食い入るような視線を俺に向けながら聞いていた…

「そうか…。だが、まだ理由は言っていないな」

「はは…、すまん。だが、それは一言で済んじまう。彼女がピュアでフェアな人間だからだ。それを、南玉の連中は皆認知してる。特に今日の舞台でこっちと戦う本田多美代と津波祥子は、横田に誰よりも強い信頼を置いている」

「…」

俺は、バグジーの顔つきを注意深く見ていた

コイツ、今まで見せたことのない表情じゃんか…


...



それは愕然…

まあ、そのものだったよ

「どうした、バグジー…」

「いや、何でもない。だが、その横田って子は、普通の女子高校生だったのに、なんでまた麻衣と決闘したり、警察沙汰とかになったんだ?今だって、南玉をリタイアした身だってのに、何故、この場に出てくるのか…」

「答える前に、もう少し、彼女について付け加えよう。横田競子が元女子高生ってのは、退学処分を喰らったからだ。クスリ絡みで警察沙汰になってな。あの子は今、親に勘当された状態で、年上の男と同棲してる。その彼氏も、クスリで捕まったよ、彼女と同時に。だが事実として、南玉はこの夏、彼女がいなかったら割れていた」

「…」

「…今回、都県境の女どもが墨東会も引きこんで固れたのは、あの子が動いたからだ。そういう子なんだ、横田は…。敵味方なく、彼女の発する磁力は人を惹きつけるパワーを秘めてる。加えて、彼女は目の前の壁から決して逃げない勇気を持っている。今日の俺達の雌雄を決する場には、彼女がふさわしい…」

「…わかった」

バグジーはそれだけぽつりと残し、また水路の方へ消えて行った

オレは不思議とヤツの胸中が手に取るようにわかったよ

それは…、以前、俺も感じたことだったからな…

さて、ここで優子の様子を確認しておかないと…






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