ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その15
バグジー



これが横田競子か…

ここに集まってる誰よりも、文字通り普通の子じゃないか

ふふっ…、まさしく、”そのまんま”だったな


...



「あの、バグジーさん、以上のルールで進めますんで…、いいですね?」

私はその横田の言葉に、無言で頷いたんだが…

その尋ねてくる彼女の顔が気マジメそのものだったので、思わず笑いをこぼしてしまった

「ああ、すまない。笑ったりして。君をバカにしてる訳じゃないんだ」

「はい…」

その素朴な目つきもいい…


...



「…砂垣には君をセレクトした理由を聞いたよ。それ以外もいろいろと。本郷麻衣とも去年戦ったらしいな…」

横田はきょとんとした目で、俺を見つめていた

まるで純真な子供の目だ

だが、何気ない佇まいからは、妙に大人を感じる

このアンバランス加減は何なんだろうか…



...



ルール確認を終えたあと、三島優子が目に入った…

「三島…、いいか、俺の授けた作戦通り貫け。相手が挑発して来ても、冷静さを保ってな」

「柴崎さん、あなたには感謝してます。私みたいな者にレクチャーしてくれて。でも私…、冷静でなんかいられないよ、やっぱり…」

「冷静にって心がければそれでいい。あとは、お前の猛る思いに従って戦え。所詮一夜漬けみたいなもんだし、実戦でそのまま成果など出せはしないだろう。だが、やってみるんだ。やれる限りな」

「わかりました…」

この女も最初はただのズベかと思っていたが…

砂垣が変わったせいもあってか、急に見違えたな

今日の結果がどうであれ、こいつらの仲が冷えないことを願いたい


...



さて…、間もなく7時だ

”会場”は予想をはるかに終える大入りになったな

私の相手も盛んにウォーミングアップ中のようだ

津波祥子…

先日の初対面した際のやり取りで、あの女の”程度”はこの私にには即伝わった

トータルで捉えれば、所詮、私の敵ではない

ずば抜けたサイズを持つ津波も、その体躯の範疇で力を増幅できる凡人と見切った

個々の要素は、スクラッププールで2台目のバイクを操っていた迫田とかいう女とは持って生まれた才が違う

津波は迫田のような脅威はない

だが…、横田からも感じたが、今のヤツにはどこか底知れない発力が伝わってくる

それこそ、実力以上の底力を具現できる源になるのだろう

とにかく…、油断はできないということだ

フン…、ここまで心が躍るのは久々だぜ

さぞや熱い戦いになるだろう

では、こっちも掌をウォームアップだ、ハハハ…





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