ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その16
バグジー



私は今、心を導かれたこの東京埼玉県境に、ようやく辿り着いたんだという実感に浸っている

それは言葉にできないような臨場感を伴って…

私と津波祥子が戦う前に、こんな女たちの激しい猛り合いを見せつけられるとは予想外だった


...


「…三島さんの指摘を否定はしませんよ。でも、このおけいが加盟してからは、私たちもそういう思い違いを正した。今の南玉連合は以前の南玉じゃない。その自負は持っています。あなた達とは一緒にしないでもらいたい!」

「いいえ、一緒よ。よく聞きなさいよ、本田!先月、この横田さんが動かなかったら、南玉なんか今頃、喧嘩別れで真っ二つよ。祥子とアンタは慌てふためいてさ…、そんで、南玉を去って生活かけて必死に働いてる横田さんに泣き付いてね、みっともない。節操のなさもそこまで来ると、呆れてものが言えないわ。アハハハ…」

三島は意識していないだろうが、サシのケンカを控えた当事者としては絶好のマインド状態に入ってる

ああして本田と喧々諤々でやり当あってるうちに、冷静な興奮をキープできたんだ

逆に本田の方は、当初落ち着いていたが、だいぶ動揺してるな

まあ、三島が開き直って捨て身になれたとはいえ、ここまでズバッと言及されたんではな…


...


「…挙句に、ボロが出て分裂寸前の南玉に私たちが狙いを定めた途端、なりふり構わず数集めじゃない。あろうことか、仇敵だった真樹子さんにまで手を差し伸べて。それだって、横田さんがいなかったら、まとまってたの?男がいなきゃ何もできないとか、私たちに講釈たれておいて、あんたこそ、南玉を抜けた横田さんに頼りっきりじゃん。情けないったらないっての!」

こっちの女たちは三島の歯切れのいい毒舌に、溜飲を下げっぱなしだ

始めは相手方への罵声を連呼していたが、次第に三島の発言に聞き入って大きく何度も頷き、その都度拍手をしている

中には恍惚の表情の者や、感極まって涙をにじませてる女もいるな

砂垣の側についてる女たちは、常に嫌われ者扱いされてきたんだろうから、その胸中は計り知れる…


...



「…本田、その火傷はやり過ぎだったって思いもあったけど、今こうしてあんたと向い合うと、ざまあみろって気持ちだってあるわよ!そう言うことね。さあ、もう口での言い合いは疲れたわ。この先の決着は戦ってつけましょう!」

「ええ、同感ですね…」

さあ、二人ともスタンバイに入ったな

ジャッジの横田もそれを悟って、両サイドのサブに目で確認している…

フフッ…、これは思いのほか面白い戦いになりそうだな





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