ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】
その39
夏美



ついに戦いは終わった

祥子の元には、傍らに付きっ切りだった岩本真樹子と高滝馬美が真っ先に駈けつけ、ほぼ同時に、バグジーの元へも何人かが駈け寄って行った

両陣営とも、激闘を終え、意識を失ってる”友”を介抱してる

「…先輩、私は祥子のところへ…。”後のこと”、多美とお願いします」

「ええ、わかったわ…」

鷹美は祥子がいる”場所”へすっ飛んで行ったわ

よし…、私のやれるべきことをやろう


...



「多美、この結果では、先方との申し合せは日を改めてってことにした方がいいと思う。祥子もしばらく休ませないと無理だろうし…。どう?」

「はい。”それ”で行きましょう、先輩」

本田多美代は即答だったわ

ならば、お次は…

「…久美、今言った”方針”で、岩本さんに各部隊の承諾をもらってきてくれる?」

「了解しました!」

ふふ…、北田久美に持って行かせれば、片桐さんや墨東会、それに各協力勢力の同意は岩本がすぐに取り付けるわ

「南部さん、墨東のOB連とフリーの人達なんですけど…」

「よし、そっちは俺が話してくるよ」

「お願いね。…じゃあ、多美、一緒に”先方”に行こうか」

「はい!…ああ、静美、さえ、他のみんなの整理は頼むよ」

「うん、それは私たちでやっとくから任せて」

この子達…、この夏までいがみ合っていた仲だったはずのに…

みんな、しばらく見ない間に頼もしくなったわ


...



「ああ…、なら、あっこも彼女たちを手伝ってやってくれる?」

あっこは「承知しました。では、早速…」と快諾して、みんなと慌ただしく消えて行ったわ

こういう役回りとなると、湯本敦子って女、完璧なんだよなあ…(笑)

うん?

アハハ…、テツヤ君はいつの間にか、ジャッジの重責を終えたケイコのそばにいるじゃん(苦笑)

二人が話す素振りというか佇まい…

”あの頃”のまんまだ

まったく…、今だにあそこまでのお似合いぶりって、なんなのかしらねえ…

ここまでの”激動”があったっていうのに、こうも色あせないなんて…

何ともな二人だよ、あいつら(爆笑)



...



とにかく、祥子は頑張ってくれた

結果は引き分けだったけど、十分だよ、凄いって!

あとの”調整”は、みんなで力を合わせてやっていこう…

都県境の土台はしっかりしてる…、大丈夫よ

しかし…、一年前を思い出すわ

まさかあの時、津波祥子が南玉連合のトップとして都県境の命運をかけた戦いを一身に背負うなんて想像できなかった

そうよ…

あの時点では、あの子、本郷麻衣サイドのフリーで燻ってた大女って認識にとどまっていたもん

でも、”あの時”…

高津のり子の自宅に設けられた、南玉の臨時本部へ”敵側”からの人質として津波祥子を連れた際の、彼女の言葉はまさに、横田祥子と共通するピュアを感じたよ

たぶん、それ…、その場にいた矢吹鷹美もおんなじ思いだっただろう…





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