私達、怪奇研究部!!
【第1怪】転校生と交換留学生
20××年、現代。
「ねぇ、このクラスに交換留学生が来るんだって! 転校生は1組に!」
京都の中学校に交換留学生と転校生がやってきた。交換留学生は前々から来ることが分かっていたのだが、転校生は急な話である。
教室の後ろを見ると、1人の少女が緊張した面持ちで座っていた。
(交換留学生、か。久しぶりに会うな……)
少女の名前は円城寺美玲、学年は2年生。
ピンクの髪にポニーテールが似合い、水色の瞳は透き通っており氷のようにも感じる。
「どんな人が来るのかなぁ、気になるね! 美玲!」
友人からの声でふと現実に戻る。
「えっ! あぁ、そうだね……」
「どした? ボーっとして」
すると美玲が訝しげな表情で話し始めた。
「交換留学生、実は幼なじみなんだよね。小3くらいまではこっちにいたような気がするんだけど小4から東京に引っ越しちゃって」
気がする。幼なじみではあるが引っ越しの理由を教えずに急にいなくなってしまったのだ。美玲はその事を思い出し、なんとも不思議な表情になっていた。
友達なのに、幼なじみなのに別れも言えずに相手が引っ越した。
(子どもの頃は良く遊んだなぁ、今でも仲良く出来るといいけど……)
「お前らー、席付けよー」
担任が教室に入って来た。後ろから交換留学生も続く。
(来た……純だ! 懐かしい)
短髪で赤い色の髪にキリッとした紫の瞳。同じくらいだった身長は記憶より何倍も高くなっていた。170cmはありそうである。
(あれ? 純の髪ってあの色だったっけ?)
「お待ちかねの交換留学生だ。仲良くするんだぞ。自己紹介よろしく」
「皆さん初めまして。東京の藤聖院学園から来ました。佐々木純です。これから藤聖院の良さやこの学校の良さなどをお互いに知っていけたらと思っています。よろしくお願いします」
藤聖院学園、幼稚舎から大学まで敷地内にあるという広大な東京の名門校だ。在学生も芸能人や財閥の子息、天才的な頭脳を持つような子どもたちが集まっている。そして純もまた大病院の子息である。
「質問あるやつはせっかくだから聞いてみろ」
担任の皮切りにクラスメイトが質問し、それに純が答える。
「はいはーい! 部活って何部入るんですか?」
「それは追々決めていこうかなと思っています。出来れば藤聖院にはないような変わり種の部活なんかがあったらそっちに入ってみたいですね」
変わり種の部活、クラスのほとんどが頭に浮かんだだろう。この5文字の部活。
『怪奇研究部』と。
おそらくどこを探してもこんな頭のおかしい人物が作ったような部活動はないだろう。いくら大都会東京でも。
「怪奇研究部とかどう? 私が入ってる部活なんだけど変わり種だよ!」
美玲はここぞとばかりに怪奇研究部を推した。部員数には困っていないが、美玲は純を部活に入れたい理由があった。
「怪奇研究部、か。よし! それにしよ!」
こうして美玲は部員を1人確保したのである。
これが幸か不幸か、確かにその日を境に美玲の……怪奇研究部員たちの運命は動き出したのである。
怪奇研究部、略して怪研に入ると宣言してから休み時間、純はクラスメイトから質問攻めに合っていた。そんな中現れた1人の人物。
「なぁなぁ! 怪研入るって本当? あ、俺山中ね」
「あ、あぁ。そうだよ、よろしく山中くん」
「くぅ~! サッカー部来て欲しかったぁ、あんなインチキ部活なんかじゃなく」
「インチキ?」
すると美玲が自分の席から声を上げ、こちらにやって来た。
「ひっど! 仮にも部員がいるのにインチキとか!」
「事実だろ? 『心霊依頼承ります』とかアホらしいって! 現に依頼に来る先生たちだって雑用とかだけでしょ」
怪奇研究部、通称なんでも屋。去年設立され、まだ2年ほどしか経っていない部活動だが活動内容はこれといってパッとしないものばかりだ。部活動と称して夜に廃墟や心霊スポットに回っているようだが、それは学校の管轄ではない。
そのため昼の正しい部活動の時間では活動しないことが多く、来る依頼も雑用ばかりなのでインチキ部活として知られている。
(インチキ、か)
純は少し考えた後、山中に言った。
「インチキか試す?」
「お、面白そうだな! やろやろ!」
ニヤリと笑って純が話し出す。
「お前、爺ちゃんの墓参り行ってないだろ。爺ちゃんってのは母方のほうね、父方の方はまだ生きてるっしょ」
「え? お、おう。確かに母さんの父さんは10年前に死んでるわ、墓参り…も行ってない、かも……」
「行った方がいいぞ。それが供養になる。行くなら爺ちゃんが生前好きだった八つ橋持っていけよな」
山中は不思議そうに、怪しそうに純を見る。どうせインチキだ、と思いたいが純の言ったことは確かに当たっている。
「もう俺は怪奇研究部の部員だから、もし当たってたらこれからインチキとか言うなよ」
すると一部始終を見ていた美玲が純に耳打ちする。
「昔より強くなった? 霊能力」
美玲が純を部活に入れたかった理由。それは純が霊能力を持っていたから。小さい頃から美玲は純の不思議な力を目の当たりにしてきたのだ。
「いや、まだまだだよ。純平兄さんに比べたら」
「母さん、急に変だけど爺ちゃんの墓参りって行った方がいいんじゃない?」
家に帰り、山中は母に墓参りに行く提案をした。
「うーん、そうねぇ。アンタが大きくなってからは行ってないわね、でも忙しいから無理よ。お爺ちゃんだって分かってくれるわ」
「だ、だけどさ。行った方がいいんじゃない? 八つ橋持って!」
「あら? アンタにお爺ちゃんが八つ橋好きだったの、言ったかしら?」
するとソファで話を聞いていた父が言った。
「今日行ってみるか。流石にお義父さんも寂しいだろうし、先延ばしにしてたらいつまで経っても行かないだろ」
こうして墓参りに行くことが出来たのだった。その夜、山中は不思議な体験をすることになる。2度とインチキだと言えなくなるような体験だった。
夢の中、覚えていないはずの祖父の顔が浮かんできた。知らないはずだが確かにその人が祖父だと分かる。
祖父が山中に声をかけた。
「ありがとうなぁ、大きくなったんだなぁ。会いに来てくれて嬉しかったよぉ」
祖父は優しい笑顔をして消えていった。
翌朝、学校で山中はクラスメイトと昨日起きた出来事を話していた。
「いや、マジなんだって! 本当に霊能力はあるかも知れん!」
「いや、あんな話したから意識してただけだろ」
そこに美玲が現れる。何やら嬉しそうだ。
「ね、インチキなんかじゃなかったでしょ。怪研はガチなんだからね!」
魔界。生前罪を犯した者が死後に収容される場所。
「ジュンが京都入りしたようです」
そう言うのは片眼鏡をつけ、艶やかな黒髪を後ろで束ねた秘書のような面持ちの青年。
「そうか、これでピースは揃ったね。そろそろかな」
赤い眼をした男が太陽系縮尺儀を見ながら返す。漆黒の髪は吸い込まれそうな美しさを放ち、光の通りにくい魔界でも存在感を放っていた。
何やら怪しげな会話だ。ジュンという人物が交換留学生の佐々木純のことなのだろうか。はたまた別の誰かなのか。
平安時代に止まった時間がまた動き出そうとしている。
「ねぇ、このクラスに交換留学生が来るんだって! 転校生は1組に!」
京都の中学校に交換留学生と転校生がやってきた。交換留学生は前々から来ることが分かっていたのだが、転校生は急な話である。
教室の後ろを見ると、1人の少女が緊張した面持ちで座っていた。
(交換留学生、か。久しぶりに会うな……)
少女の名前は円城寺美玲、学年は2年生。
ピンクの髪にポニーテールが似合い、水色の瞳は透き通っており氷のようにも感じる。
「どんな人が来るのかなぁ、気になるね! 美玲!」
友人からの声でふと現実に戻る。
「えっ! あぁ、そうだね……」
「どした? ボーっとして」
すると美玲が訝しげな表情で話し始めた。
「交換留学生、実は幼なじみなんだよね。小3くらいまではこっちにいたような気がするんだけど小4から東京に引っ越しちゃって」
気がする。幼なじみではあるが引っ越しの理由を教えずに急にいなくなってしまったのだ。美玲はその事を思い出し、なんとも不思議な表情になっていた。
友達なのに、幼なじみなのに別れも言えずに相手が引っ越した。
(子どもの頃は良く遊んだなぁ、今でも仲良く出来るといいけど……)
「お前らー、席付けよー」
担任が教室に入って来た。後ろから交換留学生も続く。
(来た……純だ! 懐かしい)
短髪で赤い色の髪にキリッとした紫の瞳。同じくらいだった身長は記憶より何倍も高くなっていた。170cmはありそうである。
(あれ? 純の髪ってあの色だったっけ?)
「お待ちかねの交換留学生だ。仲良くするんだぞ。自己紹介よろしく」
「皆さん初めまして。東京の藤聖院学園から来ました。佐々木純です。これから藤聖院の良さやこの学校の良さなどをお互いに知っていけたらと思っています。よろしくお願いします」
藤聖院学園、幼稚舎から大学まで敷地内にあるという広大な東京の名門校だ。在学生も芸能人や財閥の子息、天才的な頭脳を持つような子どもたちが集まっている。そして純もまた大病院の子息である。
「質問あるやつはせっかくだから聞いてみろ」
担任の皮切りにクラスメイトが質問し、それに純が答える。
「はいはーい! 部活って何部入るんですか?」
「それは追々決めていこうかなと思っています。出来れば藤聖院にはないような変わり種の部活なんかがあったらそっちに入ってみたいですね」
変わり種の部活、クラスのほとんどが頭に浮かんだだろう。この5文字の部活。
『怪奇研究部』と。
おそらくどこを探してもこんな頭のおかしい人物が作ったような部活動はないだろう。いくら大都会東京でも。
「怪奇研究部とかどう? 私が入ってる部活なんだけど変わり種だよ!」
美玲はここぞとばかりに怪奇研究部を推した。部員数には困っていないが、美玲は純を部活に入れたい理由があった。
「怪奇研究部、か。よし! それにしよ!」
こうして美玲は部員を1人確保したのである。
これが幸か不幸か、確かにその日を境に美玲の……怪奇研究部員たちの運命は動き出したのである。
怪奇研究部、略して怪研に入ると宣言してから休み時間、純はクラスメイトから質問攻めに合っていた。そんな中現れた1人の人物。
「なぁなぁ! 怪研入るって本当? あ、俺山中ね」
「あ、あぁ。そうだよ、よろしく山中くん」
「くぅ~! サッカー部来て欲しかったぁ、あんなインチキ部活なんかじゃなく」
「インチキ?」
すると美玲が自分の席から声を上げ、こちらにやって来た。
「ひっど! 仮にも部員がいるのにインチキとか!」
「事実だろ? 『心霊依頼承ります』とかアホらしいって! 現に依頼に来る先生たちだって雑用とかだけでしょ」
怪奇研究部、通称なんでも屋。去年設立され、まだ2年ほどしか経っていない部活動だが活動内容はこれといってパッとしないものばかりだ。部活動と称して夜に廃墟や心霊スポットに回っているようだが、それは学校の管轄ではない。
そのため昼の正しい部活動の時間では活動しないことが多く、来る依頼も雑用ばかりなのでインチキ部活として知られている。
(インチキ、か)
純は少し考えた後、山中に言った。
「インチキか試す?」
「お、面白そうだな! やろやろ!」
ニヤリと笑って純が話し出す。
「お前、爺ちゃんの墓参り行ってないだろ。爺ちゃんってのは母方のほうね、父方の方はまだ生きてるっしょ」
「え? お、おう。確かに母さんの父さんは10年前に死んでるわ、墓参り…も行ってない、かも……」
「行った方がいいぞ。それが供養になる。行くなら爺ちゃんが生前好きだった八つ橋持っていけよな」
山中は不思議そうに、怪しそうに純を見る。どうせインチキだ、と思いたいが純の言ったことは確かに当たっている。
「もう俺は怪奇研究部の部員だから、もし当たってたらこれからインチキとか言うなよ」
すると一部始終を見ていた美玲が純に耳打ちする。
「昔より強くなった? 霊能力」
美玲が純を部活に入れたかった理由。それは純が霊能力を持っていたから。小さい頃から美玲は純の不思議な力を目の当たりにしてきたのだ。
「いや、まだまだだよ。純平兄さんに比べたら」
「母さん、急に変だけど爺ちゃんの墓参りって行った方がいいんじゃない?」
家に帰り、山中は母に墓参りに行く提案をした。
「うーん、そうねぇ。アンタが大きくなってからは行ってないわね、でも忙しいから無理よ。お爺ちゃんだって分かってくれるわ」
「だ、だけどさ。行った方がいいんじゃない? 八つ橋持って!」
「あら? アンタにお爺ちゃんが八つ橋好きだったの、言ったかしら?」
するとソファで話を聞いていた父が言った。
「今日行ってみるか。流石にお義父さんも寂しいだろうし、先延ばしにしてたらいつまで経っても行かないだろ」
こうして墓参りに行くことが出来たのだった。その夜、山中は不思議な体験をすることになる。2度とインチキだと言えなくなるような体験だった。
夢の中、覚えていないはずの祖父の顔が浮かんできた。知らないはずだが確かにその人が祖父だと分かる。
祖父が山中に声をかけた。
「ありがとうなぁ、大きくなったんだなぁ。会いに来てくれて嬉しかったよぉ」
祖父は優しい笑顔をして消えていった。
翌朝、学校で山中はクラスメイトと昨日起きた出来事を話していた。
「いや、マジなんだって! 本当に霊能力はあるかも知れん!」
「いや、あんな話したから意識してただけだろ」
そこに美玲が現れる。何やら嬉しそうだ。
「ね、インチキなんかじゃなかったでしょ。怪研はガチなんだからね!」
魔界。生前罪を犯した者が死後に収容される場所。
「ジュンが京都入りしたようです」
そう言うのは片眼鏡をつけ、艶やかな黒髪を後ろで束ねた秘書のような面持ちの青年。
「そうか、これでピースは揃ったね。そろそろかな」
赤い眼をした男が太陽系縮尺儀を見ながら返す。漆黒の髪は吸い込まれそうな美しさを放ち、光の通りにくい魔界でも存在感を放っていた。
何やら怪しげな会話だ。ジュンという人物が交換留学生の佐々木純のことなのだろうか。はたまた別の誰かなのか。
平安時代に止まった時間がまた動き出そうとしている。