夏の大三角~恋~


先輩の手だ。

私の頭をゆっくりと撫でている。

先輩の顔は向こうを向いていて、表情は見えない。




「先……輩…。」

「泣いていいぞ。俺は見ないから。」





先輩が静かに言う。

先輩の優しさが、心に染みる。

嬉しい。



こんな私を慰めてくれる先輩。




優しい……。




私の頭上には、星空。


さっきよりも西側に移動し始めた夏の大三角。


ベガがぼやけて見える。



「ふふ…。私、バカだった…。」



私は、涙をこぼした。

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