君の見ていた空
 きっと、凪沙様のご家族は、色々と本性を隠したり、素顔を出さないようにしたりしていたのかもしれない。

 学校に通っている僕等も凪沙様の事件の犯人は何となく察していた。

 だけど、あまりにも権力が強くて表立って動く事はできなかった。

 梓さんは、この状況を打破する為に裏の世界の人間に助けを求めたのかもしれないし、多分だけど、表の世界の人間に見切りをつけたのかもしれない。

 ボクは、何となく、梓さんはもう、普通の人間の手助けはしてくれないし、今までのような研究や技術の発展はしないだろうと確信していた。

 僕達、普通の人間が梓さんを変えてしまったのだ。

 梓さんは、今まで僕達に沢山尽くしてきてくれたのに、僕達は梓さんが困っていた時、助ける事ができなかった。

 失望されて当然だ。

 梓さんが顔を出した時、殺してやりたくなると言った言葉は、間違いようのない本心で、こんな世界無くなれば良いと思っていたのだろう。

 梓さんは、それ以来、普通の人間の事をゴミ同然のように扱い出した。

 同じ学校の生徒や教師にも、ゴミとみなした人間には、手酷い扱いをしていた。

 例えば、梓さんの容姿に懲りずに群がって来た人間には、
 「ゴミの分際で、この僕と対等に話す権利はない。その醜い顔をどうにかしてから来いよ。とりあえず、僕の姉より美しい顔になるか、僕みたいな顔になってから出直せば?」
 できる訳がない。凪沙様の顔になる事も不可能に近いのに、梓さんの顔になるなんて、何回整形したとしても無理だろう。梓さんの顔は整形で作り出せるような代物ではないのだ。顔の形、目鼻立ち、肌の質、全てが極上で、とんでもないバランスでできあがっている。
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