君の見ていた空
ネーミングセンスと、取り巻きの顔面偏差値の高さに泣きたくなった。
西洋風のイケメンさんは、情報屋さんとして有名だし、とんでもない美形さんは、なんでも屋さんだし……、ボクは梓さんのペット紹介に現実逃避したくなった。
そして、梓さんはボクの秘密を知っていた。
「〇〇くんってさ、龍道さんの異母兄弟というか、獄門組の組長の本妻の1人息子だよね?……龍道さんは妾の女性の内の1人が1番最初に産んだ男児でその後暫く男が生まれなかったから跡取りになっただけで、血だけで言えば、キミが跡取りだよね?そして、多分、龍道さんも知っているけど、獄門組の本当の組長は、キミだよね。田中竜胆(たなかりんどう)改め、鬼ヶ城竜胆くん」
驚いた。まさか、ボクの正体を暴かれるとは。
「……フフッ、オモシロイね。梓さん……いや、梓くん。一体、いつからそう思っていたの?……ボクが獄門組の組長だなんて表立ってだって、裏ですら一度も名乗った事はないのだけど」
「田中くんは、一度も僕の殺気にビビらなかったし、むしろ面白がっていた。僕が周りの人間を邪険にすればするほど、田中くんはとても嬉しそうで、今まで壁1枚あった僕達の距離はより近くなったような気がした。……だから、僕は調べる事にしたんだ。田中竜胆、キミの事を」
ああ、そうか。ボクは、隠せていなかったのか。この胸の高鳴りを。
「……梓くんが、龍道さんのところを訪ねたって情報を得た時、ボクは、ちょっと悲しかったんだヨ。……梓くんの狂気が抑えられてしまうカラ。……でも、今はそんな事、どうでも良いカモ。……だって、ボクに獄門組の組長か聞いてきたって事は、梓くん、ボクと同じ世界を本気で見てみる気があるって事だよね?」