大江戸ガーディアンズ

「和佐、なにを考えていやがる。
主税(ちから)は知っておるのか。
千晶と太郎丸はどうしゃがった。
まさか、本田に置いたまま我が身一つで来たのではあるまいな」

兵馬は矢継ぎ早に尋ねた。
よっぽど気が()いているのか、武家言葉と町家言葉がごった煮になっている。


「無論、旦那さまは存じておりまする。
舅上(ちちうえ)様も旦那さまも、しばらくは宿直(とのい)の続く御役目ゆえ、わたくしと姑上(ははうえ)様とのことを(おもんぱか)って、むしろこの際家中(かちゅう) におるより子を連れて松波家(さと)へ戻った方が良いのではないか、と仰せになってござりまする」

本田の父子が属する赦帳撰要方(しゃちょうせんようがた)では、此度(こたび)南北の奉行所上げて策を立てるにあたって、昼夜を通して今までの御調書(おしらべがき)口書(くちがき)などを片っ端から(あらた)めているはずだ。


「……姑殿とは相変わらずか」

母と妻と間で「板挟み」になっているであろう主税を(うれ)いて、兵馬はため息を吐いた。

父の従妹(いとこ)であるがゆえ「小母(おば)上」と呼んでいた幼き頃より見知った人であり、その「(かた)き」為人(ひととなり)も承知してはいるが……

「さすれば、帰ってきていきなりその(なり)か。
どうせ、久方ぶりとばかりに木刀を振って一汗流したんだろよ。
おめぇには、他家に嫁して今じゃ二人の子のおっ()さんっ()う心構えはあんのかい」

我が妹も妹である。
片方ばかりに非があるとは到底思えまい。

——主税の野郎も、さぞかし難儀なこったろうな……


すると、和佐がすーっと目を細めた。

「兄上、お言葉を返すようでござりまするが……」

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