大江戸ガーディアンズ

「そうだなぁ……」

伊作は雁首の火皿に丸めた刻み(たばこ)を詰めた。

奉行所(おかみ)ってとこはよぉ、手前(てめぇ)らの知らせはいつだって急だってんのに、知らせたら知らせたで『なにか手掛かりはねえのか』っていきなり聞いてきゃあがるに決まってっしなぁ……」

煙管の先を火入に近づけて、雁首の莨に炭火を()べる。

「……とりあえず、おめぇに探っといてもらうとすっか」


その刹那、与太の勝気な(まなこ)がぎらり、と輝く。

——よしっ、あとは早速休みをもらう算段でぃ。

父親・甚八の苦り切った(つら)が目にに浮かぶが……

——起っきゃがれってんだ。

そうと決まりゃあ、こんな(ところ)で油を売ってはいられない。


「そいじゃ、親分。おいらは仕事に戻るぜ」

与太は立ち上がり、小上がりからひょいと土間へ降りた。

「おう、(たけ)ぇ足場に用心しなよ」

伊作は旨そうに紫煙を(くゆ)らせて与太を見送った。

< 11 / 316 >

この作品をシェア

pagetop