大江戸ガーディアンズ
「けっ、手前勝手に命じるだけでよ、
あっしら岡っ引きどもがなんでも意のままに動くって思ってやがんだろな、奉行所はよ」
忌々しげにさように云うと、伊作はくいっと猪口を呷った。
「……で、そいつの目処は立ってんのかい」
されど、岡っ引きの伊作だって偉そうなことは云えぬ。
結局のところ、下っ引きの与太に「丸投げ」だった。
だが、かような扱いが厭であらば、はじめから奉行所の「手先」などに手を染めぬことだ。
だれに頼まれた、と云うわけではない。
飛び込んだのは与太自身である。
現に父親の甚八からは常々、
『下っ引きなんぞとっとと辞めて、鳶の火消し一本に収まりやがれ』
と云われている。
「まぁ……そうだな。早々に休みをもらって話を付けに行かねぇとな、とは思ってっがな」
与太は苦々しげに口の片端を上げた。
父親の顰めっ面を思い浮かべ、自ずとため息が漏れ出そうになるのをなんとか堪えた。