大江戸ガーディアンズ

「そうだねぇ……
おすてには、ろくに稽古も学問(がく)も付けてやしないから振袖新造(ふりしん)は無理だとしても『昼三の羽衣(はごろも)の妹女郎』って触れ込みで、なんとか売り出すしかないだろね……」

だが、おつたはさようなおすてにも、そして何故(なぜ)だか先刻(さっき)よりずっと押し黙ったままの与太にも構うことなく、一人ぶつぶつと(つぶや)いていた。

「だけど、これから初見世を迎えるおすてじゃあ、どうしたって背負った荷が勝っちまうやねぇ。
もしかすっと、大事な『御役目』を失敗(しく)じっちまうかもしれないねぇ……」

煙管を手にしたおつたは、莨盆の角で雁首をまるで木魚を叩くがことくコンコンコン…と叩きつつ、しばし目を閉じて考えを巡らせた。


——それでなくったって、先達(せんだっ)てより奉行所(おかみ)からは無理難題吹っかけられてるってのに……

どうしても「吉原の大(まがき)の心意気」って(もん)お内儀(おつた)にはあった。

——このまんま、云いなりになってばっかだと思うんじゃないよ。こちとらだって、癪に触るってんだ。


「……あ、そうだ」

ふと、ある「妙案」が浮かんだ。

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