大江戸ガーディアンズ
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「此度の御役目では、吉原の廓なるものへ身を変装して入り込まねばならぬのでござりましょう。
ならば……『女手』が入り用なのではありませぬか」
「おめぇ、なにが云いてぇんだ」
兵馬は胡乱げに和佐を見た。
「吉原なる処は『妓の園』と聞き及んでおりまする。
しからば、妓たちが控える見世の『奥』はおなごでしか入れぬのではござらんか」
確かに、その身を変装した上であろうとも、奉行所に仕える隠密廻りがいきなり遊女や女郎たちの寛ぐ部屋に立ち入るのは難しいであろう。
「わたくしは父上や兄上のお導きで、一刀流の御免状を皆伝しておりまする。
さすらば……わたくしの『腕』であらば『髪切り』なる者を誘き寄せる『囮』としてのみならず、『用心棒』としても立派に御役目を果たせると思いませぬか」
和佐は父親譲りの眼光鋭き目力で、兄をしかと見据えた。
おなごとして生まれた和佐であるが、常々「我も武家の御家に生を受けた身、いつの日か公方様のために是っ非とも御役目を果たしてみとうござる」と思っていたのだ。
なにより、幼き頃より鍛えてきた我が剣術の腕が如何ほどなのか試してみたかった。
今こそ、千載一遇の機会である。
「戯け者めがッ」
兵馬は大音声で妹を一喝した。
「奉行所の御役目が、おまえごときの腕で務まるはずがなかろうぞ。自惚れるな」
「此度の御役目では、吉原の廓なるものへ身を変装して入り込まねばならぬのでござりましょう。
ならば……『女手』が入り用なのではありませぬか」
「おめぇ、なにが云いてぇんだ」
兵馬は胡乱げに和佐を見た。
「吉原なる処は『妓の園』と聞き及んでおりまする。
しからば、妓たちが控える見世の『奥』はおなごでしか入れぬのではござらんか」
確かに、その身を変装した上であろうとも、奉行所に仕える隠密廻りがいきなり遊女や女郎たちの寛ぐ部屋に立ち入るのは難しいであろう。
「わたくしは父上や兄上のお導きで、一刀流の御免状を皆伝しておりまする。
さすらば……わたくしの『腕』であらば『髪切り』なる者を誘き寄せる『囮』としてのみならず、『用心棒』としても立派に御役目を果たせると思いませぬか」
和佐は父親譲りの眼光鋭き目力で、兄をしかと見据えた。
おなごとして生まれた和佐であるが、常々「我も武家の御家に生を受けた身、いつの日か公方様のために是っ非とも御役目を果たしてみとうござる」と思っていたのだ。
なにより、幼き頃より鍛えてきた我が剣術の腕が如何ほどなのか試してみたかった。
今こそ、千載一遇の機会である。
「戯け者めがッ」
兵馬は大音声で妹を一喝した。
「奉行所の御役目が、おまえごときの腕で務まるはずがなかろうぞ。自惚れるな」