大江戸ガーディアンズ
「……旦那さま」
縁側の障子の向こうから声がした。妻の美鶴だ。
「何だ、用なら早う云え」
声を荒げたまま、兵馬が応じる。
「先ほどから、庭先で『御用聞き』が控えておりまするが……」
実は、御用聞きの与太が縁側の外まで出向いてきていた。
ところが、座敷から聞こえてくるあまりの剣幕に、なかなか声をかけられず困り果てていたのだ。
其処へ、姑の志鶴に云われて兄妹の様子を伺いにやってきた美鶴が出会したのだった。
「なんだと」
と云う声と共に、障子がすぱーんと開いた。
「あっ、松波様、夜分恐れ入りやす」
与太がぺこりと頭を下げた。
兵馬は間髪入れずに訊いた。
「おい与太、囮になる町家の者の『目星』は付いたのか」