大江戸ガーディアンズ
「そいじゃ、囮になるのはその妓っ云うこっていいな」
兵馬は与太に、と云うよりも和佐に向けて告げた。
ちらりと妹を見ると、町家の者がいる手前であろう、武家の女らしく済ました顔をしている。
されど和佐のことだ、心の衷では口惜しさで歯軋りしているに相違ない。
ところが、口を開いたのは和佐でなく与太であった。
「松波様、待ってくだせぇ。
久喜萬字屋のお内儀は、もう一人囮になる妓を考えておりやす」
与太はあわてて云い添えた。
「お内儀が云うには、これから初見世を迎える妓じゃ、どうしたって背負った荷が勝っちまって大事な『御役目』を失敗じっちまうかもしれねぇって」
「確かにな……」
兵馬は懐手をして肯いた。
「そいで、お内儀は他にどの妓を出すっ云ってんでぃ」