大江戸ガーディアンズ
「……和佐殿、下賤な身の上で申し訳ありませぬ」
美鶴はいたたまれぬ思いで目を伏せた。
「我が母や祖母の生まれ育ちを鑑みれば……
わたくしは、とてもとてもそなたから『義姉上』と呼ばれる謂れなぞ、なき者にてござりまする」
「美鶴の父親は武家だ。さらに、母親の父も武家の者だと聞いておる。
おまえはしかと武家の血を引いておるがゆえ、さように我が身を卑下するでない」
兵馬は妻に云い聞かせるがごとく諭した。
「そ、それに『振袖新造』は廓の妓っ云っても、まだ一度も客を引いたことのねえ『見習い』でござんす」
与太も声を励まして云い添えた。
「み、見世からも云い含められてっから、そんじょそこらの町家のおなごより、ずーっと身持ちは堅いと評判でやんす」
それを聞いて、和佐はほっと胸を撫で下ろした。
子を産んだからこそ分かる、あのような閨事を——しかも、数多もの男たちを相手にさせられていたわけではなかったと知り、心底安堵した。