大江戸ガーディアンズ
話があまりにも大きゅうなりすぎて、しがない町家である与太は畏れ多くて身震いするしかない。
だが、本日はひとつ確かめておきたいことがあった。
「なぁ、お内儀。
……おすても『見習い』なんだろ」
「はぁ、あんた、なに寝呆けたこと云ってんだい」
おつたは莨盆にある灰入の縁を、煙管で鋭く叩く。
カン、という響きとともに、役目を果たした刻み莨が、ぽとり、と灰入の中に落ちた。
「あの子は本来ならば、階下の|廻し部屋の女郎さ。
たまたま初見世が階上の座敷だっ云ったって、ちゃんとお客を引いて働いてもらわないと、こちとら商売上がったりなんだよ」
——おすてが……客を引く……
与太は、目の前が真っ暗になった。
「そうだ……」
また一つ、「いいこと」を思いついた。
「『舞ひつる』は人の妻になって、もう生娘じゃなくなっちまったんだったね。
せっかく見世に戻ってくるんだ。
ここらでひと稼ぎしてもらって、今まで育ててやった『恩』を返してもらうとするかね。
そしたら『髪切り』とやらを誘き寄せる格好の餌にもなって、一石二鳥だ」
再び吸う支度をするために莨入れを手にすると、おつたはうっそりとほくそ笑んだ。